
NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」にも登場して、一躍ときの人となっているのが昆虫カメラマン栗林慧さんです。
昆虫を撮影するならマクロレンズでの接写撮影になると思いますが、写真を見ると「昆虫」以外の背景もボケが少なく、本当にそのマクロの世界にいるようなシャープな写真に仕上がっています。
「こんな撮影できるレンズあるの?」って気になりませんか?
こんなレンズがあるなら是非使ってみたいものです。
そんな気になる栗林慧さんが使っているカメラやレンズに、どんな人生を歩んで来られたのか知り尽くします。
この記事の目次
【昆虫写真家】栗林慧とは
栗林 慧(くりばやし さとし)1939年5月2日 80歳 満州国奉天生まれ長崎県平戸市出身
自衛隊員ー保険会社勤務ー東京綜合写真専門学校中退ーフリーランスー栗林自然科学写真研究所設立
1978年 日本写真協会新人賞受賞
1979年 伊奈信男賞j受賞
1992年 日本写真協会年度賞年度賞受賞
2006年 レナート・ニルソン賞受賞
人生はひとつじゃない異色のカメラマン!
昆虫界のムツゴロウさん…と思しき、栗林慧さん。
1939年満州に生まれ、その後長崎県に移り住んで幼少期を過ごしているようです。
1939年といえばナチスが全盛期を迎えていた戦争時代。どういった経緯かは分かりませんが、栗林慧さんも戦争の影響を受けて一時的に満州に行っていたのかもしれません。
満州から引き揚げで長崎の平戸市に移り住んだ栗林慧さんは、自然とたわむれながらノンビリした日々を過ごします。
平戸ってあまり知られていないですが、ヤリイカやサザエなど漁獲物が沢山獲れる街。ゴミゴミした都会の風景とは少し異なり、空気がとても美味しいところです。
こんな風光明媚なところで育ったからこそ、大人になって「昆虫写真家になろう」と思えたのかもしれないですね。
自衛隊から保険の営業マンへ
青年になった栗林慧さんは自衛隊に入りワイルドな毎日を過ごします。
自衛官と聞くと顔に緑の泥を塗り、カモフラージュ柄の戦闘服を着てほふく前進しているイメージ。
栗林慧さんは4年間も自衛官として勤務しているので、サバイバルな訓練を日夜続けていたのかもしれません。
その後「なんか、ちがう」と思った栗林慧さんは保険の営業マンに転職します。
こちらの保険会社では自衛隊員歴を上回る5年も勤務。営業のイロハをばっちり学んだようです。
保険の営業マンとして日々仕事をこなしながらも「求めているものは、コレではない」と思っていた栗林慧さん。
1962年になると「東京綜合写真専門学校」に入学。
かなりの有名校ですが途中で気持ちが萎れてしまい中退。
自分の求めているものと学校の先生が教えてくれるものが、少し角度が違って見えたのかもしれません。
わずか1年弱で専門学校を退学しています。
「嫌なら辞めよう」の精神が潔いですね。
現在は「昆虫のレジェンド」
その後栗林慧さんはフリーのカメラマンとして独立。
小さな虫をマクロの瞳でばっちり捉えることができる「虫の目カメラ」の開発に成功しています。
カメラマンとしてキャリアを積んでいきながら「日本写真協会」の新人賞を受賞したり「紫綬褒章」を授与したりと様々な賞を受賞されています。
生まれ育った長崎県平戸市には昆虫博物館もオープンしているので、まさに「虫の世界のレジェンド」と言って良いと思います。
栗林慧さんの使用カメラ・レンズと機材など
はるか彼方の海を見ている1人の美男子…そう思いきや、よくよく見ると1匹のトノサマバッタ。
栗林慧さんの写真を見ていると「ヒトなのか虫なのか」その線引きがだんだん曖昧になってきます。
そしていつしか「どっちでもイイだろう」と思えてしまう不思議さ。
1匹の虫を美しく、そして凛々しく撮る天才栗林慧さんはどんなカメラや機材を使っているのでしょうか。
無いものは手作りする?栗林慧さんのプロ魂
栗林慧さんのカメラは売っているカメラを分解して「自分の扱いやすいようバージョンを変えたオリジナル品」です。
「気にいるカメラが無いなら、作ってしまおう…」そんな粋な発想がカッコいいですよね。
改造したカメラはGoPro
ちなみに元のカメラは「GoPro」というブランドのもの。
新品でも2万円くらいの値段で購入できるモノもあります。
「GoPro」はサーファーが「海の写真を撮りたい」という思い開発されたカメラなので、水に強く動くものをキレイに撮る天才アイテム。
2002年に発売されてから世界で2600万台も売り上げているヒット商品なので、気になる方は一度チェックしてみても楽しいかもしれません。
栗林慧さんは「GoPro」などの安価なカメラを購入して、レンズなどの細かな部品を一度綺麗に取り外してから「昆虫用」にカスタマイズしています。
あの伝説の「虫の目レンズ」も同様の手順でリメイクしたようです。
「市販のもので納得できないなら使いやすく付け替えてしまおう…」そんな柔らか頭だからこそ、あんなダイナミックな写真を撮れるのかもしれません。
病院用の内視鏡をプラス
栗林慧さんのオリジナルカメラには、なんと病院の先生が使う内視鏡のレンズが取り付けられています。
内視鏡といえば会社の人間ドッグや胃カメラのイメージ。
かなりのマニアックなレンズですが、それも「自分の仕事用アイテム」として上手に活用できるのが栗林慧流。
「ファイバースコープ スネークカメラ搭載 工業用内視鏡」
ちなみに内視鏡カメラは工業用タイプであれば一般人でもAmazonなどのネットで買えることができるようになっています。
「MAYOGA ワイヤレス内視鏡カメラ wifi接続 スマホ・タブレット用」
工業用でも安いもので1万円から出ているタイプもありますし、今ってスマホやタブレット用のワイヤレス接続できるものも売っているんですね。
知らなかった。
しかも3000円くらいで買えちゃいます。改造が好きな方は買ってみても楽しいかもしれません。
ちなみに日本の医学が進歩しているように、病院で使う内視鏡のレベルは日増しに向上しています。
昔とちがって画素数が各段に良いので目で見る以上にクリアに映像を映し出してくれます。
「ぼやけているのがあまり好きではないハッキリくっきり映像を残したい」こんな人にとって現代の内視鏡レンズはまさに最強です。
栗林慧さんのように内視鏡レンズを使ってオリジナルのカメラ作りにチャレンジしても楽しいかもしれませんね。
栗林慧さんの写真集
「虫嫌いのあなたも虫が大好きなあなたも」どっちも満足できるのが栗林慧さんの写真集です。
どんな世代の方でも「見て良かった」と思える不思議な余韻を残してくれる作品ばかりです。見ておかないと損しますよ。
発見「栗林さんの虫めがね」
三角形アタマのカマキリが何かを言いたそうにこっちを振り向いている写真。
青空を元気に歩くツチイナゴ。まるで人のように1匹の虫たちを面白おかしく撮っている写真集が「発見 栗林さんの虫めがね」です。
タイトルから分かる通り小さな子ども向けの絵本なのですが、騙されたと思って「大人」にも見て欲しい作品。
簡単な文しか掲載されていないので、ばっちり写真に気持ちがのる仕掛けになっています。
人と同じように「虫にも人生が色々あるんだ。小さな虫にも魂ってあるんだ。」そんな感想が湧いてきて、明日の仕事も頑張ろうとピュアに思える内容になっています。
人生にため息をつきたくなったとき、どこか遠くに出かけたくなったときに読み返したい一冊です。
栗林慧全仕事―独創的カメラでとらえた驚異の自然
すごいタイトルの写真集が「栗林慧全仕事―独創的カメラでとらえた驚異の自然」
「プロフェッショナル-仕事の流儀」を思わせる偉大すぎるタイトルです。
昆虫カメラマンとして第一線を突っ走ってきた栗原さんの30年にわたる軌跡を追いかけた作品。
新しく作成した「アリの目カメラ」も大胆に公開されているので、虫好きならぜひ一度読んでおきたい内容になっています。
1冊あたり140ページもあるので図鑑のように重たい本となっていますが、それでも暇なときにフムフムと気さくに読める内容。
「栗林慧さんってどんな人なの?どんな撮影技術を使っているの?」そう疑問に思ったときに丁寧に答えてくれる優しい一冊になっています。
栗林さんの虫めがね 瞬間
こちらも「栗原さんの虫めがね」シリーズの3作目となる「瞬間」
虫たちの色々な瞬間にクローズアップして、人生模様を切り取った面白い作品になっています。
カブトムシが空中でおしっこするシーンや、ハチたちが美味しい花のジュースを飲んでいる一枚。
それぞれの虫たちの「今」が栗原さんの優しい眼差しで映し出されています。
私たちにも色々毎日あるように小さな虫にも色々なワンシーンがあって、毎日笑ったり泣いたりときには怒ったり…忙しく生きているんだと痛烈に実感させられる作品集。
虫のことがちっとも科学的に分からない人でも、簡単に手に取ることができるユニークな作品になっています。
「たびら昆虫自然園」
「道の駅・昆虫の里たびら」
栗原さんの生まれ故郷には「たびら昆虫自然園」と「道の駅・昆虫の里たびら」があります。
どちらも虫にちなんだスポットとなっていますが、この本を携えながら旅行に出かけると「新しい発見」が必ず待っていてくれる場所。
「感動できるワンシーンに会いたい」そう願っている人にオススメです。
真のプロフェッショナル 栗林慧さん
NHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」にも出演された栗林慧さんですが、本当にその名に恥じないプロフェッショナルっぷりは凄まじいものがあります。
80歳になっても新しいことにも挑戦し続けられています。
「プロフェッショナル 仕事の流儀」では、これまで50年に渡って撮影を続けてきた蛍を、新たに蛍の光が水面に映り込むさまを挑戦されています。
また他にも、ドローンを使った「虫の目線」からの撮影にも挑まれていて、その情熱は尽きることはありません。
「写真」というくくりの中でも、ここまで「昆虫」に没頭しとらえ続けられる想いは、魅力的に映らないわけがありません。
いくつになっても変わらぬ情熱をもつ栗林慧さんのような「プロフェッショナルな人」になりたいという憧れと尊敬を感じずにはいられません。