カメラをいじった事のある方なら、一度は耳にしたことがあるのが森山大道さん。
「あれ・ブレ・ボケ」と評される独特の作風は日本だけでなく海外でも高く評価され、スナップ写真を撮るならぜひ参考にしたい巨匠です。
そう易々と真似できるわけもないのですが、スナップ写真のその極意をちょっとでも知りたいなと、今回は森山大道さんの使用するカメラや作品からプロフィールまで掘り下げていきたいと思います。
この記事の目次
写真家 森山大道とは(プロフィール)
森山 大道(もりやま ひろみち)1938年10月10日ー79歳
グラフィックデザイナー ー岩宮武二・細江英公のアシスタントを経て独立。
日本写真批評家協会新人賞
日本写真家協会年度賞
第44回毎日芸術賞受賞
ドイツ写真家協会賞受賞など受賞歴多数
日本はもとよりアメリカやイタリアなど海外で展覧会を開いていることでも有名な世界的なアーティストで、もともとはフリーのデザイナーからデザインに親しむうちに写真への興味が高まった森山大道さん。
写真家となる前には、巨匠・岩宮武二さんに弟子入りしてカメラの基礎を学んでいます。
そんな森山大道さんがどんなカメラを使っているのか気になりますよね、一緒にチェックしていきましょう。
森山大道さんの使用するカメラはGR
森山大道さんと聞くと「さぞかしリッチな高級カメラを使っているんだろう…」と思いきや、フタを開けると意外にも庶民派。
リコー公式サイトのインタビューによると、古くからGRを愛用されているとのことです。
リコーGRシリーズ
リコーのGRといえば、女性の手のひらにもスッポリ収まってしまうくらいの超ミニサイズのカメラ。
シャープでキラキラしたデザインのカメラが多いなか、こちらはマットで重厚な造りのボディになっています。
メタリックを抑えた素朴な風合いは世代を問わずに愛される定番カメラ。親子で共有もできそうな落ち着いたデザインになっています。
東京都現代美術館で開かれた展覧会には森山大道さんの写真が寄贈されていますが、サンパウロの街並みを写した写真もリコー製のカメラだったそう。
森山大道さんいわく「手に馴染む・使い心地がひと味ちがう」のがリコーのカメラの良さなのだそうです。
森山大道さんの撮影方法
ファインダー越しにじっくり被写体を捉えるカメラマンが多いものの、森山大道さんの撮影方法はファインダーを使わない自由な方法。
あえてファインダーを覗きこまないことで、モデルの人との距離がぐっと近くになるのだそうです。
細かくファインダーを見なくても頭の中に設計図が用意されていると話す森山大道さん。
長年つちかってきた体の感覚でおおよその距離感が掴めるため、無理に努力しなくても体が勝手に反応してくれるそうです。
もともとはストリートファッションを撮影するカメラマンとして活躍していた森山大道さん。
狙い撃ちする写真ではなくパシャパシャ枚数を重ねたうちに「奇跡の1枚」に出会えることも多いため、他のカメラマンと比べて1日あたりの撮影ショットも多いそうです。
駆け出しの頃は100mフィルムをまるまる1本は使っていたと話す森山大道さん。
数をこなしているからこそ、ノーファインダーでも体が獣のように、自由に反応してくれるのかもしれません。
森山大道さんのHP・インタビュー記事
公式HP
https://www.moriyamadaido.com/
インタビュー記事
若手カメラマンと比べて多くの写真集や作品を世に送り出してきた森山大道さん。
雲の上の人と思いきやリーズナブルで手の届きやすいカメラを扱っている、意外にもフレンドリーなカメラマンです。どんな作品や写真集を手掛けているのか調べてみました。
森山大道さんの作品は
津軽2010
東京2012
森山大道さんの写真を見ていると、いわゆるありふれたクールでカッコいい写真ではなく「ごく当たり前の日常を、当たり前に撮る」作品が多いことに気づかされます。
例えば津軽の写真では白いクルマの横を小走りに走っている女性。女性の真上には、地元の不動産屋さんや内科・婦人科の広告看板が無造作に並んでいます。
こちらの写真はモノクロで撮られているのですが、カラ―では感じることのできない日本らしさが随所に表れています。ゴチャゴチャ看板が並んでいる風景は、たしかに海外に行くとあまり見られない描写。見過ごしてしまいそうな日本らしさが1枚の写真に込められています。
また東京の写真に関していうと、ガールズバーや飲み放題の広告前で佇んでいる、1人の女性の姿がパチリと収められています。
女性の姿はウマい具合にぼかしてあるのですが、そのぼかし具合も「ディープな日本の夜」を表現しているようで感心させられます。決してお世辞にもキレイな夜の風景ではないのですが、これもまた東京の都会の夜の風景のひとつ。
華やかな看板と、やや暗い女性の姿が対照的に描かれている妖艶な作品です。
森山大道さんの写真集
宇和島
愛媛県宇和島を旅行で訪れたときに撮影した宇和島のおだやかな自然と温かい風土が描かれています。
森山大道さんは白黒好きの写真家として知られていますが、この作品ではオールカラー。
自然の風景だけではなく、現地で暮らす人々の笑顔もばっちり掲載されていて、あたかも自分が宇和島を訪れたような不思議な錯覚に陥ることができます。
ケイ
東京の街を中心に森山大道さんがあちこちの町をぶらり旅をしたときに撮影した、ユーモラスな写真を集めた作品集です。
キレイなものばかりではなく、汚いもの・リアルなものも「ありのまま」に撮影された珠玉の一冊。
読んでいると思わず鳥肌がたつ、森山大道の世界にどっぷり浸かれる一冊です。
犬と網タイツ
自身の有名な作品になぞらえて付けられた面白いタイトルの一冊。
誰もが見過ごしてしまう日常にスポットをあてて撮影した、何かに気づける作品集です。
タイトルに出てくる犬と網タイツはどこを探しても見当たらないので悪しからず…。
大御所ならではのヨユウが感じられる、遊び心のある写真集です。
森山大道さんまとめ
今年には80歳になる森山大道さん。
紹介した作品や写真集ももっとたくさんあり、写真集だけでも50以上のタイトルがあります。
なので紹介しても紹介してもしきれないほどなのですが、やはりこの歳まで第一線で戦い続けている方の作品は見ていて力強く、エネルギーに満ち溢れています。
何か普段どんな写真を撮ろうか?なんて悩んで思いつかなくて、どうしたらいいんだろう、、なんて思う時もあるのですが、森山大道さんの言葉にこんなものがあります。
ただ僕がこれまで撮影してきた路上のスナップ写真というものは、とにかく圧倒的に量を撮らないと意味がないんですよ。
僕のスナップ写真に対する考え方の一つとして、「量のない質はない」というのがあります
ストリートカメラマンは圧倒的な偶然に委ねているのだから、数を撮らないことには引っかかってこない
この言葉はそんな何を撮ろうか迷った時に自分に言い聞かせたい言葉です。
そんな写真だけじゃなく、撮影スタイルにも学びを感じる森山大道さんをご紹介しました。ぜひ気になった方は作品も見てください。