男性のヌード写真を介してジェンダーを問う写真を表現する鷹野隆大さん。
写真とは美術とは表現とは自由で、そこに配慮があるにも関わらず、扱う題材から誹謗を受けることがある鷹野隆大さんの写真。
ありふれた日常の些細な一瞬の情景もいいですが、強く訴えるどういった想いからその写真の撮影に到ったのか、そんな考えさせられる写真の方が私は好きで、それこそが表現なのだと思っています。
そんな鷹野隆大さんのプロフィールから使用するカメラや作品についてリサーチしました。
この記事の目次
鷹野隆大とは(プロフィール)
鷹野隆大(たかの りゅうだい) 1963年ー56歳 福井県生まれ
早稲田大学政経学部経済学科卒ーカメラマン
2006年 第31回木村伊兵衛写真賞受賞
早稲田大学卒、学びのスペシャリスト
鷹野隆大さんは1963年生まれ、福井県で産声をあげています。
小学校や中学校ではマジメひと筋、外で遊ぶことよりもコツコツ机に向かって勉強する方が得意だったようです。
高校を卒業したあとは名門の早稲田大学へ。政治学部を卒業しているので、かなりのエリートといえますね。
大学で政治学の勉強をするかたわら、たまたま知人からオファーを受けたのが「舞台を撮影してみない?」という気軽なお誘い。
「えっ?俺がカメラ?」と戸惑いつつ、パシャパシャ撮った撮影が思いのほか楽しくって、鷹野隆大さんはカメラマンとしての道を志すようになります。
人生って本当に何が転ぶか分からないものですね。
「オトコの性」を切り取る個性派アーティスト
大学を卒業したあと鷹野隆大さんは個人のフォトグラファーとして活躍するようになります。
男の人のカメラマンというと「グラビアアイドルや女性モデルを撮りたがる人」がとっても多いのですが鷹野隆大さんは異才。
なんと男性のヌード写真を沢山とっているとってもユニークな人です。
写真によっては「自分のセミヌード姿」も惜しみなく公開している大胆すぎる持ち主。
何でもオープンに包み隠さない良さが鷹野隆大さんの芸風にあらわれています。
第31回木村伊兵衛写真賞を受賞
また鷹野隆大さんは写真集「In My Room」にて第31回目の木村伊兵衛写真賞を見事受賞されています。
木村伊兵衛さんは戦前戦後の日本を撮りまくった、今でいうところのアラーキーのような存在。カメラ界のゴッドハンドと言われる人物です。
木村伊兵衛を受賞したあとの鷹野隆大さんはノリにのりまくり、今ではあらゆる分野で活躍しています。
LGBTの問題をイメージさせる、セクシャリティにまつわる問題を問う個展を開いたり、SNSに奇抜な写真をアップしたり「ほかの写真家と違うユニークな活動」で注目を集めています。
「カッコつけない」ことがカッコいい
鷹野隆大さんは男性ヌードを撮りはじめた最初のころは「メタボ男性のボディ」にびっくりすることもあったそうです。
初々しい20代のボディとちがい、脂肪やたるみが目立ち始める40代や50代の男性ボディ。
最初は戸惑いを感じつつも「これが生きる原点なんだ」と感じ始めた鷹野隆大さん。
カッコつけないありのままの素顔を切り取る天才として今も第一線を突っ走っています。
鷹野隆大さんが使用するカメラ
オトコやオンナ…などこれまでの既成概念に捉われないザ・1枚を撮りまくっている鷹野隆大さん。
どこか幻想的で訴えかけるモノが多い鷹野隆大さんの写真ですが、どのようなカメラや機材を使い分けているのでしょうか。
その原点を追いかけてみました。
「デジカメは嫌い」あっさり断言するクール派
鷹野隆大さんは若い学生さんに向けたミニカメラ教室を定期的に開いています。
その中でも伝えていることが「フィルムカメラが、1番の基本なんだよ」ということ。
パソコンを経由してモノを考える機械的なデジタルカメラが好きではなくて、仕事や私生活すべてを支えているのはデジカメでは無くフィルムカメラなのだそうです。
お気に入りカメラはCONTAX コンタックス T3
カラーはブラックのため男らしく凛々しい雰囲気。
「CONTAX T3」はフィルムカメラ好きの間でもよく話題に上る一品で、中古品だと13万円くらいから購入することができます。
ぺたんと薄いシルエットのカメラで男性だけではなく女性にも人気の高いアイテム。
「カメラです」と主張しすぎないためバッグにさらりと入れて持ち歩くことができます。
「いいな」と思った気になる風景があればバッグからさり気なく出してパシャパシャ。気負いせずに持てるところが魅力的ですね。
装飾やアクセサリーなどに無駄なものがなく初心者から上級者まで楽しめる一品。
カメラの腕に関係なく誰でも持つことができることが、最大の魅力です。
カラーより「モノクロ」派
また鷹野隆大さんは最近はカラー写真よりも白黒写真に強く惹かれているそうです。
その理由は「モノクロ写真の方がファンタジーの世界を表現できるから」だそうです。
たしかに見たものをそのまま表現するカラー写真に比べて、ワンクッション挟んだ柔らかさを表現できるのが白黒写真の良さ。
同じ風景をとってもモノクロ写真の方がレトロ感が出てより昔っぽい雰囲気になります。
「いつもとちょっとテイストを替えたい」そんなときは、鷹野隆大さんのようにカラーから白黒に替えた写真にチャレンジしてみるのも面白いかもしれませんね。
ちなみに鷹野隆大さんは「絶対に写真を加工しない」ポリシーの持ち主。
いくら楽しいと思っても写真を切ったり貼ったり重ね合わせたり…いわゆるパソコンを使った仕事はしないそうです。
ありのままのクールさ&美しさをどこまでも追求している鷹野隆大さん。カッコいい後ろ姿を真似したくなります。
鷹野隆大さんの写真・作品について
オトコのカラダって何なの…?答えられそうで答えられないハードな課題に、丁寧に答えている鷹野隆大さん。
他の男性フォトグラファーとは異才を放つ活動がとってもステキです。
鷹野隆大さんの作品にはどんなモノがあるのでしょうか。
IN My Room
鷹野隆大さんといえばスルーすることが出来ないのが「In My Room」です。
1冊2万円もする高級写真集ですが、550部しか刷られていないこともあって写真ファンの中では超人気の作品集となっています。
メイクした男性の写真が表紙にバリっと飾られていて「え?この人はオトコなの?オンナなの?」と戸惑ってしまう一冊。
けれどもページを捲っていくうちに「男か女かなんて、結局どっちでもイイんだよな~」と思わせてしまう哲学的なスゴさがあります。
写真のキメが本当に美しくって技術的なスゴさを実感できる一冊になっています。
素肌に飾りのついた白いサンダルを履いている
「In My Room」の写真集の中には男性モデルとおぼしき人物が白い花柄モチーフの付いたサンダルを履いているナマアシの写真があります。
足オンリーなのですが妙なエロさがあり、思わず赤面してしまう作品に。
ただのオジサンの下半身…と言ってしまえばそれまでなのですが、とにかく写真の撮り方がうまい。
ひとつの風景を切り分けても、こうもエロさ&美しさを強調できるのか…といった内容になっています。
同じモノを眺めていても見る角度や心の風景ひとつ違うだけでも「写真はとっても変わるんだ」という当たり前のことが良く分かる作品になっています。
個展「距離と時間」
男のヌード写真ばかりで鷹野隆大さんってちょっとキモい…。
そんな人に是非チェックして欲しいのが「距離と時間」という鷹野隆大さんが定期的に開催しているややマジメチックな個展です。
距離と時間の中には東京タワーや交差点・オフィスビル・ビジネスマンの後ろ姿など…いわゆるノスタルジックな都会の風景が多く登場します。
東京に住んでいる人にとっては「毎日よく見ているロケーション」なのですが、フィルムカメラを通してみると「こんなにも東京ってキレイだったんだ!」と改めてビックリすることができる作品になっています。
鷹野隆大さんは東京に自宅があり、どうやらそこから撮った写真を上げているようなのですが日記のように綴られた風景に感動。
せわしくなく交差点を歩くビジネスマンの影や、まだ誰もいない静かな朝焼けのロケーションに「生きているって、こういう事なんだ」と考えさせられる写真になっています。
個展は不定期で開催されているため見たい方は小まめにチェックを。
「これからの写真」展でのわいせつ物陳列扱いの被害
被害と書いたのは、私は鷹野隆大さんが何一つ悪いことをしていないと思っているためですが(実際いくつもの配慮の上行われた作品展示なので問題ないはずだった)展示されている作品がわいせつ物の陳列に当たるとして県警が美術館を検挙しようとする事件が過去にありました。
詳しい内容については「webDICE」に載っているので読んでみていただけると分かりますが簡単に説明すると
”愛知県美術館で展示されていた鷹野隆大さんの作品が、匿名の通報を受けて県警から「わいせつ物の陳列」に当たるとして、愛知県美術館に対して撤去をしなければ検挙するといった事案が発生し、それに伴い作品の「不都合な部分」を布で隠す変更が行われました。”
この作品展示では元々から鷹野隆大さんのブースは布で区切りがされて入口に監視員を配置した観覧規制を設けて、事前の展示に関する配慮が弁護士に相談のうえで十分に配慮されていたにも関わらず。
多くの来場者の中のたった一人の声に対して、表現の本質を見極めずに検挙しようとする警察には苛立ちを感じますし、なんとかしようと食い下がった美術館側は表現の定義を曲げない素晴らしさがあるように感じました。
あくまで私の意見で「そうじゃない」と言う人もいるかもしれませんが、これは正直ひどいと思います。
「表現の自由」の名の下に何でもしていいわけではありませんが、充分な配慮がされたうえで訴える写真が展示されていて、多くの方が色んな見方をして考える有意義な時間だった作品に対してあまりに失礼な話ではないでしょうか。
このままだとヒートアップして長々と書いてしまいそうなので、このあたりにしておきますが鷹野隆大さんの写真はアートです。
アートには「異端」がつきものなのに、そこを理解せず作品が本来の姿で表現されないのはすごく悲しいことではないでしょうか。
鷹野隆大さんまとめ
最後のほうは悲しく腹立たしい話になってしまいましたが、そんなことでネガティブになるような方ではないのが鷹野隆大さん。
その後も多くのジェンダーを扱った作品を発表されています。
他とは違う写真を見たい、今までにない世界観を味わい。
そう思ったらぜひ鷹野隆大さんの作品を見ると違った視点が見えてくるはずです。