スマホのカメラなんかで、いい写真は撮れない。
一眼カメラユーザーは表面上は、その様に強気な発言をしてはいるものの、内心、戦々恐々としているものです。
数年後にはスマホカメラが進化して一眼カメラが過去の遺産と化してしまうのではないか。
本当にそんなことが起こりうるのでしょうか?
スマホカメラと一眼カメラの画質や性能を比べてみましょう。
スマホカメラの進化は止まらない
携帯電話が普及しはじめて約25年、スマホが普及しはじめてからは約10年。
携帯端末は驚くべきスピードで進化しています。
特に進化している機能の1つがカメラ機能です。
スマホカメラはどこまで進化したのでしょう。
画素数は一眼カメラの領域に
カメラのスペックで一番最初に比較されるのが画素数ではないでしょうか。
スマホカメラの画素数は、ついに4000万画素にまで到達しました。
2018年発売のHUAWEI P20 Proは広角カメラが約4000万画素です。
4000万画素というと、一眼カメラでも高画素機と呼ばれる画素数です。
ただし、HUAWEI P20 Proは実用的には画素情報を合成して1/4にするので1000万画素が標準画素数となります。
それでも、今やスマホカメラの画素数は1200万画素が標準となっているだけではなく、4000万画素のスマホ向けイメージセンサーも既に製品化されています。
つまり4000万画素スマホの商品化はすぐにでも可能で、あとは価格や消費者のニーズが合えばいつでも発売される状況です。
単純に画素数だけで見ると、スマホカメラは一眼カメラの背後にピッタリ張り付く位置にいます。
多レンズ化がトレンド
スマホカメラは、多レンズ化がトレンドとなっています。
以前は自撮り用のインカメラと通常撮影用のアウトカメラ2つが一般的でしたが、最新スマホはアウトカメラに複数のレンズを取り付けたものが主流となりつつあります。
アウトカメラに広角レンズや望遠レンズを組み合わせたカメラを複数搭載することで、今までできなかったスマホ単体での望遠撮影や広角撮影を可能としています。
基本的には広角、標準、望遠の3カメラが主流となってきていますが、9つものカメラを搭載したスマホも発表されており、今後は多レンズスマホが増えていくことは間違いなさそうです。
単純な多レンズ化の他にも、デジタルズームだけでなく光学ズームが可能なスマホまで登場しており、スマホカメラの光学系は単焦点撮影しかできなかった従来のものから大きく進化しようとしています。
AIによって撮りたい写真以上のものが撮れる
スマホカメラのもう一つのトレンドがAIを使った写真の最適化です。
スマホで撮影するとAIが自動的にどういった写真か判別して最適化してくれます。
例えば人物を撮影すると自動的に背景をぼかしたり、肌を滑らかに描写して素敵なポートレートに仕上げてくれます。
風景もより美しく、夜景もより印象的な写真に仕上げてくれるのです。
丁度、一眼カメラでRAW撮影した画像を現像してPhotoshopで加工する感じですね。
スマホでは現像することなく、AIが自動で最高の写真に仕上げてくれます。
一眼カメラとスマホの性能や違いを比較
まだまだ進化の止まらないスマホカメラですが、現状ではスマホと一眼カメラの違いはどこにあるのでしょう。
なくなった一眼カメラの優位性
ちょっと前までは、スマホカメラと一眼カメラの機能には大きな開きがありましたが、最近のスマホカメラでは一眼カメラの優位性がかなりなくなってきています。
レンズ交換
一眼カメラといえば、レンズ交換できるということが大きな特徴でしたが、スマホでも先程あげたように複数レンズが搭載されたことで、一眼カメラの絶対的なメリットではなくなりました。
もちろん、焦点距離を自由自在に変えられる一眼カメラ程の性能はありませんが、スマホカメラでも広角や望遠撮影が特別なアタッチメントを使うことなく可能となりました。
もちろん、レンズラインアップ内であれば自由に焦点距離が変えられる一眼カメラと同等とは言えませんが、望遠撮影や広角撮影が一眼カメラでないと出来ない撮影ということではなくなっています。
絞り
絞りを自由に変えることで被写界深度を変化させることができるということも一眼カメラのメリットでしたが、最新スマホには絞り機能も組み込まれているものもあります。
絞りで変わるものといえば被写界深度ですが、被写界深度もAIが自動的に最適化してくれる機能もあり、これも一眼カメラに限ったメリットではなくなりました。
手ぶれ補正
ついには手ぶれ補正もスマホに搭載されるようになりました。
あの薄いボディに手ぶれ補正を搭載するというのは驚きの技術としか言いようがありませんが、スマホにもちゃんと電子式だけではなく一眼カメラと同じく光学式の手ぶれ補正が搭載された機種があります。
センサーサイズが小さく、手振れしやすいスマホカメラですが、手振れ補正があれば一眼カメラが有利な暗所撮影などもスマホで代用が効くようになるかもしれません。
設定の豊富さ
シャッタースピード、絞り、ISO感度、露出補正など写真を決める要素をコントロールできるというのが一眼カメラの醍醐味ですが、これもスマホでも可能になっています。
スマホのカメラアプリには露出をかなり細かく設定できるものもあり、擬似的に一眼カメラと同じ様な露出設定も可能です。
AIによって最適化された写真を撮るだけでなく、一眼カメラと同様に自分好みに露出やホワイトバランスを変えることもできます。
センサーサイズの大きさは全く別物
画素数だけでなく、機能的にも一眼カメラに迫るスマホカメラですが、どうあがいても一眼カメラに及ばないポイントがあります。
それはセンサーサイズです。
スマホに搭載されるイメージセンサーは一眼カメラの1/10以下の大きさしかありません。
例えば一眼カメラとスマホカメラで、同じ2000万画素だった場合、イメージセンサーの面積は1/10なので、スマホカメラの受光素子1個の大きさは一眼カメラの1/10ということになります。
そうなれば、当然ですか受光素子が感知できる光も単純計算すると1/10ということになります。
スマホは携帯通話機器なので、イメージセンサーに合わせてボディを大きくしたりはできないので、いくら進化を続けるスマホと言えども、一眼カメラに匹敵するイメージセンサーを搭載することはできません。
感度の高い受光素子が開発されれば小さな受光素子でも画質が上がりますが、当然一眼カメラにも採用されるので、イメージセンサーの面積差による画質の違いは永遠に埋まることはありません。
イメージセンサーの大きさは一眼カメラの絶対的なアドバンテージです。
イメージセンサーの大きさが生み出すアドバンテージ
イメージセンサーの大きさが生み出す1番のアドバンテージが画質です。
一眼カメラの大きなセンサーはそれだけ多くの光を受けることができるので、いわゆる白飛びや黒つぶれが少なくなります。
暗がりでも、少ない光をしっかり感知して描き出すことができます。
また、同じ色の部分でも大きな受光素子であれば微細な色の変化を感知できるので、ベタ塗のような部分も少なくなります。
それによって同じ画素数でもスマホカメラでは描けない画質の写真を生み出すことができます。
スペック比較は意味がない!?
そもそも構造や目的が全く違うスマホカメラと一眼カメラ。
スペック上の数値で比較するということはどこまで意味があるのでしょう。
画素数を比較する意味はない
スマホカメラは一眼カメラに匹敵する画素数のものも発売されはじめましたが、スマホにそこまでの画素数は必要なのでしょうか。
近年、一眼カメラの画素数は雑誌や新聞に掲載するために必要な画素数、2000万~4000万画素という数値で落ち着いており、あまり極端な高画素機を追い求める動きは少なくなっています。
スマホもSNSなどでの利用を考えれば1000万画素でもトリミングしてSNSにアップしても十分な画素数となります。
画素数が不必要に増えると画像データがストレージ容量を圧迫するので、スマホも必要十分な画素数、1800万画素程度で落ち着く傾向がみられます。
画素数はもはやカメラの優劣を左右する絶対的な指標ではありません。
F値も比べる意味はない
近年はF値1近くの明るいスマホカメラが話題となっていますが、このF値は一眼カメラのそれとは全く比較になりません。
スマホカメラがF1.2だからといって、一眼カメラのF1.2と同じ写真が撮れるわけではありません。
それはセンサーサイズが違うので、F値が同じでも被写界深度は全く異なるからです。
スマホで一眼カメラと同様の大きなボケをつくるにはどうしてもCG加工が必要になります。
スマホカメラに一眼カメラは淘汰されるのか
コンパクトデジタルカメラがスマホカメラに淘汰されようとしていることは出荷台数から見て明らかです。
だからといって、次に一眼カメラが淘汰されてしまうかというとそういったことはないでしょう。
もちろん、遠い未来にはカメラという存在が無くなっていることはあるかもしれませんが、現状、予測可能な未来の範囲ではそういうことはないでしょう。
その大きな理由としては、スマホカメラの進化の方向性が一眼カメラとは違うからです。
一眼カメラはダイナミックレンジなどの画質や連写速度など写真機としてユーザーが求める機能を追求して作られています。
一方で、スマホカメラはユーザーが喜ぶ美しい写真、SNSで他人に見せたくなるような写真を撮るための機能が追求されています。
フルオートでしか撮影しないようなユーザーをターゲットにした一眼カメラはスマホカメラに淘汰される可能性はありますが、自分で画作りをするための一眼カメラ、目の前の瞬間をそのまま切り取る一眼カメラが淘汰されるということは、いかにスマホカメラが進化しても当分ないでしょう。