CP+2019で最も注目を集めたレンズの1つ、「NIKKOR Z 58mm f/0.95 S Noct」。
そのコンセプトの1つが、人の目を超えるレンズでした。
そもそも、人間の目はレンズのスペックにするとどのような数値になるのでしょうか?
人間の目を一眼カメラに例えると
人間の目をレンズに例えると、レンズは水晶体の1枚構成なので単焦点レンズと例えることができます。
単焦点レンズの中でも、いわゆる単玉レンズと言えます。
メガネやコンタクトレンズを使っている人はレンズが2枚構成になりますが、水晶体とメガネの距離を変えたりはしないのでやはり単焦点レンズですね。
そして、瞳孔部分が絞りの役割をして、毛様体筋が水晶体の厚みを変えることでピント調整を行っています。
人間の目のF値は?
NIKKOR Z 58mm f/0.95 S Noctは開放F値0.95というレンズの明るさに注目が集まりました。
人間の目のF値は一般的にF1.0であると言われています。
F1.2やF1.4のレンズを一眼レフに装着してファインダーから覗いてみると、実際に目で見たときとの明るさの違いがわかりやすいかと思われます。
写真の明るさはF値の他にシャッタースピードやISO感度が関係するので変わってきますが、だいたい裸眼ではF1.0の明るさがあるとされます。
ただし、この解釈は感覚的なもので、実際に眼球の構造から物理的に計算するとF2~3前後の数値になるという解釈もあります。
そういった物理的な数値はありますが、見ている景色と同じ明るさで撮影できるレンズと考えればF1.0が基準になると考えて差し支えないでしょう。
NIKKOR Z 58mm f/0.95 S Noctはそれよりも明るいF0.95ということで注目されました。
交換レンズでF1.0を切るにはショートフランジバックが必要で、フルサイズミラーレスはF1.0を基準としてフランジバックを設定していると言われ、今後は続々とF1.0前後のレンズが登場してくることが期待されます。
人間の目の焦点距離は
交換レンズの焦点距離は画角に影響します。
人間の視野角は120度とされ、これをレンズの焦点距離に例えると10~12mm前後の超広角レンズとなります。
よく風景写真などを標準レンズで撮影すると、目で見た景色よりも迫力がない写真になることがありますよね。
それは20mm前後の標準ズームワイド端程度の焦点距離では目で見るよりも狭い範囲でしか撮影出来ていないからです。
ただし、超広角を持つ人間は目に入った光を全て処理しているわけではなく、一部分のみを重点的に処理していると言われています。
ちょうど、一眼カメラのクロップと同じ処理です。
その時に見ている画角から考えると人間の目は50mm相当となります。
スナップ撮影やポートレートで50mmで撮影した写真が違和感なく感じられるのはこのためです。
人間の目の画素数
近年の一眼カメラの画素数は2000万~4000万画素が主流となっています。
この数値は雑誌や新聞などの紙媒体に印刷するときに必要な画素数となっています。
では人間の目はどの程度の画素数を処理しているのでしょう。
人間は視野角の内、0.01度まで細分化して見ているとされています。
つまり、0.01度よりも小さい幅で変化するものは見分けられないということになります。
このことから、人間の目の画素数を計算すると5億7600万画素になるとされています。
ただし、これは視野全部を完全に解像した場合の極論であり、実際に人間が重点的に処理している中心部の画素数に限れば700万画素くらいとされています。
動画性能
最近では一眼カメラでも動画性能が重視されるようになってきました。
そこで注目される数字に60pや30pというものがあります。
簡単に言うと、1秒間に何コマの動画かということで、30pよりも60pの方が滑らかな動画であるといえます。
人間の目は30p以下のフレームレートでは、動画がコマ送りの様に見えます。
つまり人間の目の動画性能は約30pということになります。
では60pは必要ないのでしょうか。
人間の目の処理と画面に映る動画が全く同じタイミングで1コマずつ切り替われば全く違和感なく見ることができますが、実際にはズレがあり、30pよりも60pの方が滑らかに見えることは明らかです。
人によっては60pと120pの違いを感じ取れるという人もいるので、今後は120pの動画性能のカメラが求められる時代も来るかもしれません。
ISO感度
星空を撮影するとき、オートで適当に撮影しても星はほとんど撮影できません。
肉眼では満天の星なのに写真では1つも星が写っていなかったという経験は誰しもあることでしょう。
それもそのはず、暗所に慣れた人間の目はISO 375000相当とされています。
そんな超高感度は絶対無理!とも言われていましたが、Nikon D5は拡張ですがISO 3280000を実現しました。
人の目の10倍です。
流石にノイズが多くてあまり使い物になりませんが、常用ISOでも102400なので、かなり人の目に近い光が拾えるようになりました。
ホワイトバランス
ホワイトバランスは、人間の目、というよりも画像処理をする脳が超ハイスペックとも低スペックとも言える部分です。
黄色のサングラスをかけたことはありますか?
黄色のサングラスは輪郭をハッキリ見せることから、雨の日の運転やスポーツなどで効果を発揮します。
黄色のサングラスをかけてすぐは、景色が全て黄色に見えて違和感を感じますが、すぐに脳が色補正をして普段と変わらぬ色味で見えるようになります。
人間の脳はそれほどすぐれたホワイトバランスをもっているということが言えます。
一方で、脳の色補正は主観も入り込むので、ネットで話題となった服の色が金にも青にも見える画像のようなことが起こってしまいます。
そういった意味ではあまり信用できない一面もあります。
手ぶれ補正
フルサイズミラーレスの登場でボディ内手ぶれ補正が話題となっていますが、カメラの手ぶれ補正は人間の目には遥かに及ばないと言えるでしょう。
普段歩いていて、視線のブレを意識したことはありますか?
車を運転していても、よっぽどの悪路でない限りは視線のブレを感じることはないでしょう。
それはすべて脳で処理しているからです。
脳が身体の動きと視線の動きを合わせてブレのない映像を算出しています。
ただし、人間の手ぶれ補正は、カメラのボディ内手ぶれ補正のようにイメージセンサーが動いているわけではないので、ブレが大きくなると映像はどんどんクロップされて視界が狭くなるというデメリットもあります。
カメラやレンズはあくまで機械であり、人間の目は主観も入り込むファジーなものなので比べること自体に大きな意味はないかもしれませんが、こうした数値を頭に入れておくことで、見た目に近い写真を撮る助けにすることができます。