SONYの独占市場だったフルサイズミラーレスも、Nikon、Canonと続々と参入して群雄割拠の様相を呈してきました。
そうなると、あのメーカーのあの機能が欲しい、こっちのメーカーのこの機能も欲しい、といった感じで、各メーカーの独自性のある様々な機能に目移りします。
そこで、今回は各メーカーのいいとこ取りした究極のフルサイズミラーレスについて考えてみましょう。
フルサイズミラーレスのボディサイズ問題
フルサイズミラーレスが登場してレフ機から一番変わったところといえば、サイズでしょう。
ミラーとペンタプリズムが不要になったことで、より薄く、高さも抑えてコンパクトに作ることができました。
ところで、フルサイズミラーレスがレフ機に比べてコンパクトで携帯性がよくなったことの恩恵を享受しているユーザーはどれくらいいるのでしょう。
もちろんミラーレス機にはファインダーをなくしてコンデジ並にコンパクトになった機種もありますが、フルサイズミラーレスではEVFを採用するのでレフ機からコンパクトになったと言ってもAPS-Cのレフ機と同等か、ちょっと大きいくらいです。
しかも、重さで言えばレフ機と大差ありません。
そもそもフルサイズ一眼はレンズが大きいので、ボディの小型化はそこまで大きな恩恵を得られにくいところです。
むしろ、フルサイズミラーレスでは小指あまりの方が問題となっています。
コンパクトにしすぎたフルサイズミラーレスはホールド感が悪いのです。
そのため、拡張グリップというボディサイズをわざわざ大きくするパーツが社外製だけでなく、純正品まで発売されています。
SIGMA fpの様にEVFすら排除して超コンパクトフルサイズミラーレスにして必要に応じて拡張パーツを取り付けるという方法も一つのアイデアですが、拡張パーツを増やせば今度はボディの防塵防滴など堅牢性に不安が出てきます。
フルサイズミラーレスはフランジバックの分、薄くはなりますが、サイズ感的にはレフ機と大きく変えずにホールド性を維持しつつ、機能性を強化した方が完成形に近づけそうです。
ショートフランジバックが生み出す究極のマウント
カメラのサイズが変わったことの大きなメリットとなっていることは、何と言ってもレンズマウントです。
レフ機に比べると大口径、ショートフランジバックとなったことで、物理的にはメーカー関係なくレフ機すべてのレンズに対してマウントアダプターを作ることが可能となりました。
純正品では自社レフ機レンズとのマウントアダプターしか販売されていませんが、サードパーティ製では他社レフ機レンズとの組み合わせも可能です。
さらに言うと、各社フルサイズミラーレスマウントの中でも、最もショートフランジバックで大口径な機種であれば、物理的には他社フルサイズミラーレスレンズとのマウントも作ることができます。
すでにSONY EマウントレンズをNikon Zシリーズに装着するための厚さ2mmのマウントアダプターは開発されています。
ユーザーにとっては長年のネックとも言える、レンズマウント非互換問題が解決するかもしれません。
Lマウントアライアンスは革命を起こせるか
レンズマウントで注目したい動きがLマウントアライアンスです。
Leica、Panasonic、SIGMAの3社は共通のマウント規格でカメラ、レンズを開発すると発表しました。
これによって、この3社はレンズとカメラを自由に組み合わせて使える様になりました。
フルサイズミラーレスはレンズマウントにおいても革命を起こそうとしています。
フルミラならではの新機能
フルサイズミラーレスにはミラーがなくなったことでレフ機では実現できなかった特徴的な機能が生まれました。
瞳AF
瞳AFはミラーレス定番の機能ともなっていますが、SONYの最新機能では動物の瞳にもAFを合わせられる様になりました。
動物への瞳AFはペット写真などで活躍します。
フルサイズは被写界深度が浅いので、ピントを外しがちですが瞳AFがあれば、目にガチピンのナイスショットが増えます。
瞳AFは、もはやミラーレスにはなくてはならない機能ですが、今後は追従性能や検知精度に注目が集まりそうです。
超高速連写
ミラーレスになったことで、連写時にミラーを動かす必要がなく、さらに電子シャッターを使えば物理的には高速で動くパーツはないのでレフ機では不可能だった速度での高速連写が可能になりました。
レフ機では10コマ/秒あればかなり高速連写とされプロ機でも15コマ/秒には届いていません。
そんな中、SONYフルサイズミラーレス α9は20コマ/秒というレフ機を圧倒する連写速度となっています。
20コマ/秒を超えるとなると30コマ/秒はもはや動画の世界なので、写真としては20コマ/秒が求められる最速連写と言えそうです。
ボディ内手ブレ補正
撮影時以外でもイメージセンサーに光が当たっているミラーレス機ではイメージセンサーを動かして手ブレ補正を行うボディ内手ブレ補正が可能になりました。
ボディ内手ブレ補正の大きなメリットはレンズの選択肢が増えるということです。
従来のレンズ内手ブレ補正の場合は、社外レンズメーカーは手ブレ補正を独自開発しなければなりませんでした、しかし、ボディ内手ブレ補正であれば、社外メーカーは手ブレ補正を装備する必要がないので参入しやすくなり、価格も抑えられます。
また、オールドレンズなどのそもそも手ブレ補正がないレンズでも手ブレ補正ができるのでそういったレンズも選択肢となります。
ボディ内手ブレ補正はミラーレスなら絶対に欲しい機能です。
ハイレゾショット
ボディ内手ブレ補正のシステムを応用すると、イメージセンサーを少しずつズラして撮影することでイメージセンサーの画素数よりも大きな画素数で撮影できる機能が実現できます。
ハイレゾショットやリアルレゾリューションなどと呼ばれるこの機能は、簡単に言うとイメージセンサーを動かしながら高速連写し、高解像度写真を合成する機能です。
そのため、連写中にカメラが動かない様に三脚固定したり、動いている被写体には使えないといった制限もあるので使い勝手はあまり良いとはいえませんが、あれば便利な機能といったところです。
ほぼ成熟された一眼レフとは違い、ミラーレスはCanon、Nikonが漸く力を入れはじめたところで、今後はハイレゾショットの様な予想もしない新機能に期待が高まります。
全画素超解像ズーム
ハイレゾショットと似たような機能で、全画素超解像ズームがあります。
全画素超解像ズームはSONYのカメラに搭載されている機能で、デジタルズームをしても解像感を保ったまま拡大することが可能です。
ハイレゾショットと違い、カメラを三脚固定せずに遠くの被写体を解像感を保ったまま撮影できる便利機能ですが、絶対的な画素数が増えるわけではないので、動かない被写体であればハイレゾショットで撮影したあとに拡大すれば似たような効果が得られるのでハイレゾショットで補完できる機能ということもできます。
フルサイズミラーレスの操作系
フルサイズミラーレスで目下のところ最大の課題となっているのが操作系ではないでしょうか。
一眼レフカメラはフィルム時代から長い時間をかけて操作しやすいボタンやダイヤル配置というものが出来上がってきました。
フルサイズミラーレスはサイズが変わったことでボタンが減ったり、新機能やAFポイントが増えたことで操作系の向上ということが目下の課題となっています。
それに対して真っ先に可能性を見せたのがCanonで、EOS Rにはマルチファンクションバーが装備されていて、ダイヤルよりも自由度が高い操作が可能です。
またEOS RPではEOS Rよりも背面液晶をやや右手寄りにすることで、液晶の一部をノートパソコンのタッチパッドの様に使うタッチ&ドラッグ操作がしやすくなっています。
ファインダーに様々な情報を表示できるEVFなので、今までの様にファインダーから目を離して設定する機会が減ることを考えると、タッチ&ドラッグでマウスポインターの操作やスマホのフリック入力の様に直感的な操作系はより重要になってきそうです。
インターフェース系
インターフェース系でフルサイズミラーレスになって重要視されるのがUSB給電への対応ではないでしょうか。
バッテリーの保ちがレフ機よりも悪く、長時間の撮影に弱いミラーレスとしてはUSB給電で撮影できる様になれば、屋内撮影であればバッテリー残量を気にする必要がなくなります。
屋外でも、モバイルバッテリーが使えるということは大きなメリットになります。
また、インターフェース系で言えば、記録メディアのスロット数もフルサイズミラーレスで話題になっています。
Canon EOS R、RPとNikon Z6、7がシングルスロットにしたことに対して、SONYはSDカードのダブルスロットが標準になっています。
プロカメラマンはバックアップのためにダブルスロットがマストになりますが、アマチュアでもバックアップやRAWとJPEGのとりわけなど、ダブルスロットはかなり便利なのでコンパクトなフルサイズミラーレスといえども、カードスロット2枚分のスペースは欲しいところです。
動画性能
動画性能は将来的には8Kも求められる時代が来ることは間違いありませんが、まずは4K60pが欲しいところです。
一眼動画は4K30pまでは新発売のカメラにはほとんど搭載されています。
人間の目は、30p以上あれば動画をある程度滑らかに認識することができますが、30pと60pでは明らかに滑らかさに差がでます。
60pと120pになると、その差は大きく感じなくなりますが、30pと60pの差は大きいので、4K30pならフルHD60pでの撮影と選択に迷うところです。
8Kは現状では技術的な壁が高くなっていますが、4K60pは欲しいスペックになります。
画素数はどこまで高画素が必要か
2019年フルサイズ一眼新王者となったSONYはα7R4でついに6000万画素オーバーというとんでもない画素数のカメラを発表しました。
画素数が多ければ印刷できる用紙をより大きくできたり、トリミングの自由度があがるというメリットがあります。
4000万画素フルサイズカメラに400mmの望遠レンズで撮影したものをトリミングするよりは2000万画素APS-Cで同じ画角で撮影した方が画素数は大きくなりますが、6000万画素あれば、わざわざAPS-Cを用意しなくても同じ様な画角、画素数をトリミングで実現できます。
ただし、画素数が大きくなるとそれだけ記録メディアの容量も圧迫しますし、連写時のバッファ切れも気になります。
紙媒体への印刷といっても、大きなポスター印刷でもしない限りは4000万画素あれば十分な画素数なので、高画素機にすることで価格があがるよりも現実的な4000万画素が欲しいスペックになります。
高画素を実現する裏面照射型CMOS
SONYが6000万画素オーバーというスペックを実現できたのは裏面照射型CMOSに対するSONYの強みがあります。
通常、画素数が増えると光を検知するセンサーである受光素子1つが小さくなってしまいますが、裏面照射型CMOSは従来のCMOSよりも受光素子に当たる光の量を大きくとれるので高画素でも受光素子が比較的大きく、ダイナミックレンジを広くすることができます。
SONYは裏面照射型CMOSを世界で初めて商品化したメーカーなので、技術的蓄積が豊富です。
NikonはSONY製センサーを使っているとされていますが、イメージセンサーを自社製造するCanonは裏面照射型CMOSという分野では遅れをとっています。
しかし、Canonはデュアルピクセル搭載裏面照射型CMOSセンサーの特許を既にとっているので市場への投入も順次といったところでしょう。
デュアルピクセルCMOSはやはりAF速度のメリットが大きく、像面位相差AFの様にイメージセンサー内に位相差センサーを配置する必要もないので、AFポイントがほぼ画面全体に広がります。
デュアルピクセル裏面照射型CMOSセンサーが完成すればかなり魅力的です。
究極のフルサイズミラーレス機能まとめ
では最後に究極のフルサイズミラーレスのスペックをまとめていきましょう。
デュアルピクセル裏面照射型CMOSセンサー 4000万画素 4K60
やはりイメージセンサーは裏面照射型で爆速AFのデュアルピクセルです。
画素数は6000万画素も魅力的ですが、実用面では4000万画素あれば不満はなさそうです。
そして動画性能としては4K60pはぜひとも欲しいところです。
瞳AF
瞳AFはもはやミラーレス必須とも言える機能で、人間だけでなく動物にも対応した瞳AFが欲しいところです。
もちろん、単に動物に対応するだけでなく、AF追従させながらの高速連写があればポートレートでも動物写真でもかなり動きのある写真を撮ることができます。
ボディ内手ブレ補正
構造上レフ機では難しいボディ内手ブレ補正ですが、ミラーレスならやはりレンズ内手ブレ補正よりもボディ内の方が、レンズの選択肢が増えるということからもメリットが大きくなります。
そして、せっかくボディ内手ブレ補正でイメージセンサーを可動とするならハイレゾショットもあると便利ですね。
タッチ&ドラッグ
今の所、ボタンの少ないミラーレスにおける操作系の最適解はタッチ&ドラッグではないかと考えられます。
スマホ操作になれた人にとってはほぼ抵抗なく操作できます。
ボディは完全防水へ
コンパクトさを売りにするフルサイズミラーレスですが、フルサイズカメラはコンパクトにするにしても限界があるので、現行機よりも一回りサイズアップしても良いので防水性や、落としても壊れない堅牢性を強化しても面白いかもしれません。
そういった点から言うと、レンズ交換時にイメージセンサーが露出してしまうミラーレスにおいて、EOS Rの様な電源オフでイメージセンサーをシャッター幕でカバーする機構はどの機種にも装備して欲しい機能です。
特許や技術、コストなどの問題で、いいとこどりのフルサイズミラーレスというのは実現は難しいとはわかっていても、各メーカーから次々と新機能が発表されるフルサイズミラーレスには夢が広がります。