オールドレンズといえば、以前はフィルムカメラでしか楽しめないレンズでしたが、最近ではデジタルカメラでも楽しめるようになり注目を集めています。
オールドレンズの楽しみ方や選び方をみていきましょう。
オールドレンズとは
オールドレンズとは、主にフィルム時代に作られた古いレンズを指します。
フィルムカメラ全盛期は、現代の様にレンズマウントに電子接点もなく、AFやAE、手ブレ補正も搭載されていないので、交換カメラ用レンズ製造には光学設計のみで製造可能だったので多くのメーカーで存在していました。
それによって様々なメーカーが作った個性あふれるレンズがありました。
現代のように解像感を追求したレンズではなく、フレアやゴースト、歪み、低コントラスト、ボケなどを「味」として楽しむことができます。
Instagramに投稿するときにフィルター加工をしたりしますよね。
フィルター加工すると単にスマホで撮った写真と比べて、独特の雰囲気ある写真となり、いわゆる映える写真となります。
オールドレンズでは、そういったフィルター加工をすることなく、独創的な写真が撮れます。
オールドレンズで撮った写真は、フィルターによってデジタル加工で量産できる様な画一的なものではなく、そのレンズでしか写せないものなので、より深い味わいになります。
オールドレンズが注目される理由
そんなオールドレンズですが、最近になって注目された、むしろ最近まで注目されなかった理由は何なのでしょう。
その理由はミラーレスの存在です。
レンズ交換式の一眼カメラは、ミラーレス機、特にフルサイズミラーレスの登場で、カメラメーカーの勢力図も変わるほどの大変革期になっています。
ミラーレス機はレフ機よりもフランジバックが短いので、マウントアダプターによってレフ機のレンズを使うことができます。
さらにオールドレンズも、ほとんどがマウントアダプターでミラーレス機に取り付けることができます。
そもそもオールドレンズはM型ライカの大ヒットによって、ライカMマウントで多くの名玉が作られたことが愛好家を作るきっかけになっています。
ライカMマウントはレフ機よりもフランジバックが短いレンジファインダーカメラ用なので、レフ機ではマウントアダプターが作れず、愛好家は古いレンジファインダーのフィルムカメラでしか使うことが出来ませんでした。
しかし、ミラーレス機の登場で、デジタルカメラでもオールドレンズが手軽に使える様になりました。
しかも、そんな素敵なレンズが3万円以下、場合によっては数千円で買えてしまうということもオールドレンズの魅力です。
オールドレンズはその多くが中古レンズなので、手の出しやすい価格です。
レンズ沼というと、100万円単位で貯金が消えていくこともありますが、オールドレンズならば10万円でも何本ものレンズが買えます。
ただし、オールドレンズは種類も多いので底なし沼には注意が必要です。
オールドレンズの注意点
そんな魅力的なオールドレンズですが、オールドレンズならではのデメリット、注意点もあります。
電子制御が使えない
オールドレンズのデメリットとしては、AFやAEが使えないという点がまずあげられます。
オールドレンズの多くはモーター類などの電子部品は搭載されていないので、マニュアルでピント合わせ、さらに絞りの調節までする必要があります。
特に絞りの調節はAEに慣れている人にとっては不慣れな操作です。
また、同様にレンズ内手ブレ補正もありません。
レンズ内の電子制御に任せていた部分は、オールドレンズでは人の手によって調整が必要です。
レンズ選びに注意
オールドレンズは言い換えると中古レンズです。
中古レンズということは、同じ製品でも使用状況によって状態が異なるということです。
使い方によってはレンズに傷が入っていたり、保管方法によってはカビが生えていたり、レンズが変色していることもあります。
当然ながらメーカー保証もないので、状態もよく見ずに通販で購入すると、全く使えないということもあります。
特にバルサム切れには注意が必要です。
レンズは、1枚で使われているものもありますが、数枚を接着して使われるものもあります。
レンズの接着にはバルサム樹脂が使われてきましたが、樹脂は経年劣化するのでオールドレンズの中には接着面が剥がれてきているものもあります。
バルサム切れについては信頼の置ける業者であれば明記してある場合もあるので、購入前にチェックすることが大切です。
マウントアダプターに注意
当然ですが、オールドレンズをデジタルカメラで使うならマウントアダプターが必須です。
オールドレンズを買う場合は、自分の持っているカメラのマウントに合うアダプターがあるかどうかもチェックする必要があります。
ネット検索すればマウントアダプターはかなりマニアックなものまで見つけることができますが、発表されて間もないフルサイズミラーレスのマウントなどでは、物理的には作れても発売されていないものもあるので注意しましょう。
フルミラはオールドレンズの救世主
オールドレンズのためにミラーレス機を買ったという人は以前から結構いたのですが、フルサイズミラーレスが登場すると、オールドレンズへの注目がさらに集まっています。
その理由の1つとしては、EVFでのピーキング機能です。
ピーキング機能は液晶にピント位置を色付きで表示したり、合焦具合を可視化してくれる機能です。
それ自体は、従来のミラーレス機にも搭載されている機種もあり、マニュアルでピントを合わせるときにとても便利な機能でした。
しかし、コンパクトなミラーレス機ではEVFが非搭載の場合もあり、屋外での撮影では液晶が見にくかったり、手ブレ補正のないオールドレンズではライブビュー撮影は手ブレも気になります。
フルサイズミラーレスはEVFでのピーキングが可能なので、オールドレンズでもしっかりカメラを構えることができます。
さらに、従来のコンパクトなミラーレスに比べてボディサイズが大きいフルサイズミラーレスではボディ内手ブレ補正を搭載している機種も多く、オールドレンズでも手ブレ補正の恩恵を得ることが出来るということもオールドレンズ使用の追い風になっています。
ボディ内手ブレ補正があれば、オールドレンズでのシャッタースピードの幅が広がります。
フルサイズミラーレスは専用のレンズが出揃っていないので、レフ機に比べると選択肢が少ないように思われる方もいるかもしれませんが、マウントアダプターを使うと、レフ機のレンズからオールドレンズまで、様々なレンズを使うことができます。
10万以下で買えるおすすめの広角、標準オールドレンズ
最後に、おすすめのオールドレンズを具体的な機種名をあげて見ていきましょう。
オールドレンズはポートレートやスナップで使われる広角や標準域のレンズが種類も豊富になっています。
CONTAX Planar 50mm F1.4
標準の帝王とも呼ばれるレンズで、オールドレンズのど定番となります。
どんなオールドレンズを買えば良いのか迷っているという人は、まずこのレンズを買っておけば間違いありません。
発色とコントラストに特徴のあるレンズで、写真家の蜷川実花氏がCONTAXを愛用していることを考えれば写真のイメージは湧きやすいでしょう。
その描写を支えているのがCarl Zeissというところも魅力的です。
Carl Zeissといえば、カメラ好きなら誰もが憧れるレンズですが、新品で買うとけっこうな価格となります。
それを撒き餌レンズと同じ様な価格で買えてしまうというのは、やはりオールドレンズです。
また、ど定番オールドレンズということで、マウントアダプターも見つけやすく、CONTAXは他にも魅力的なオールドレンズが多数あるので、最初の1本に最適といえます。
Super Takumar 28mm F3.5
PENTAX Super Takumarもオールドレンズのど定番です。
Super TakumarのM42というマウントはユニバーサルマウントとして、様々なフィルム一眼レフカメラで採用されていました。
AE時代に対応できずに、その後のAF・AE時代の一眼レフでは各メーカーが独自のマウントを開発することになりましたが、それまでは広く使われていました。
M42マウントはデジタル一眼レフでもマウントアダプターが作れたので、ミラーレス登場以前から愛され続けるオールドレンズとなっています。
そんなM42マウントの中でもSuper Takumar 28mm F3.5は広く普及していた広角レンズで、市場にも多く流通していて手に入れやすいオールド広角レンズとなっています。
HELIOS-44-2 58mm
HELIOS-44-2 58mmはぐるぐるボケという非常に特徴のあるボケ味のレンズです。
HELIOSのボケ味は、近年発売されたレンズではありえないボケなので、これぞオールドレンズといった描写を楽しむことが出来ます。
オールドレンズならではのフレアも特徴的で、光源の向きを調節してあげると淡いコントラストの描写を作り出すこともできます。
SUMMARON 35mm F2.8
オールドレンズといえば、やはりLeica。
Leicaのオールドレンズといえば、SUMMICRON 50mm F2が有名ですが、同様にSUMMARONも人気のあるレンズです。
Leicaのマウントアダプターを買ったなら、この2本は揃えたいレンズです。
SUMMARONは明暗差がある被写体でも解像感が高い一方で温かみのある描写で、モノクロ描写に評価が高いレンズですが、発色も渋い特徴がありカラー撮影でもその描写を楽しむことができます。
また、見た目も特徴的なので、フルサイズミラーレスに装着すると、いかにもオールドレンズという外観になります。
最新のレンズはレンズの高透過率やフレア、ゴースト、歪みを抑えて高い解像感を追求して作られています。
被写体の光をなるべく変質させずにイメージセンサーに届けるという意味では、レンズの存在感を極限まで薄くしようという考えともいえます。
一方でオールドレンズは傷つき、劣化し、被写体の光に様々な要素、しかも、不確定要素が付け加えられて独特の味わいを生み出しています。
最新レンズの写実性も良いですが、オールドレンズのどこか抽象的な写真というのもカメラの楽しみ方の1つです。