写真撮影を仕事にする上で1番に必要なものは撮影技術の高さではありません。
例えば、あなたがお昼ご飯を食べに行くときにどこに行きますか?
・早く提供してくれて、安くで食べられるチェーン店
・のんびりしたおばあさんが営む郷土料理の定食屋
・女性と行きたいお洒落なイタリア料理のお店
ザッとあげるとこんな感じですが、どのお店も超一流の料理の技術があるかと言われればそうではありません。
チェーン店であれば早さと安さが売りになりますし、おばあさんが営む定食屋なら地域食や居心地、イタリア料理なら専門性や空間になるかと思います。
自分たちの強みがあれば、すべてを網羅しなくても仕事にできるし、すべてを把握して仕事ができている人の方が稀です。
では写真撮影においては、何が強みになるのでしょうか?
この強みがあるのとないのが、写真を仕事に出来るかどうかの大きな違いだと考えます。
趣味の写真と仕事の写真はどこが異なるのか?
では趣味と仕事で写真撮影の際に強みになり得る箇所、違いについて解説していきます。
撮影時間
これは1つの大きなポイントです。
どれだけ綺麗な写真が撮れようと、丸1日かかりますとなると頼みたいと思う人は少ないはずです。
TVなどの断片的な情報で写真撮影ってスタジオで大掛かりな撮影をしてるイメージを持たれている方もいるかもしれませんが、あれはスタジオカメラマンと写真撮影のジャンルの中の1つの分野なだけで、どちらかと言えばタイトな時間で撮影をするパターンの方が多いです。
雑誌の取材先での撮影なら長くて1時間、同窓会や親睦会などのイベント撮影ならあって2時間、出張での料理撮影なら点数にもよりますが30分〜2時間くらいで、機材のセッティングなども時間に含まれます。
こちらがいかに時間があろうが、お客様は違います。
効率よく短時間で済ませてもらえる方が良いに決まっています。
そのため、準備の早さ・段取りの良さ・構図決めがキモ。
実際に私が料理撮影を行う時は、商品点数と何の用途に使うかを聞いた上で、必要な構図を先に決め、それに近い写真をネットで調べてライティングの配置を想定してからタイムスケジュールをお伝えします。
仕事と言えば当然かもしれませんが、撮影時間に対するプロセスをしっかり伝えられるかどうかは、趣味と仕事での大きな違いになります。
ライティング
ストロボを使ってライティングを駆使する技術もそうですが、ライティング=光の扱い方の知識があるかも趣味と仕事の違いだと思います。
写真をどれだけ印象的にするかはコントラストの差によって生まれます。
なので意図的に印象的な写真を作り出すためにはライティング=光の扱い方を知っておく必要があります。
ストロボを使わない場合でも、太陽の自然光でどの位置から光が当たれば上手く陰影が作り出せるかの知識があるかどうかでは大違い。
仕事での写真撮影の大半は、ブツ撮り・料理撮影・ポートレートにしろ主役が決まっていることが多いので、その主役を強調させる撮り方で「伝えたい」ものがはっきりしています。
なんとなく良い写真ではなく、主役を見てオッと思わせる写真にするためにはライティングが必要不可欠です。
写真修正・加工のレタッチ技術や知識
先にお伝えした「撮影時間」「ライティング」の力を強めたり、それこそ多少弱くても覆せるのが写真修正・加工=レタッチです。
レタッチは写真撮影後にデータを加工する技術なので、レタッチの知識があれば撮影の際にゴリゴリに設定をいじらなくても後で修正・加工前提で進められるので、撮影技術が劣っても補ってくれます。
実際写真撮影を行っていると、予想していた状況と違っていたり、どうカメラの設定をしたら良いか分からないような困難な場面も出てきますが、レタッチの知識があることで最低ラインさえ超えなければ「後からでもなんとかなる」と自信を持って仕事をすることができます。
どんな状況でも「どうにか出来る」と思えるレタッチの知識や技術を持っているかどうかは、仕事にしてみるとかなり大きな差になります。
想像していた以上に暗い店内での料理撮影、暗転しまくりの同窓会撮影、無い時間の中で考えていられる猶予が全然なくて「パニック」になりそうでも「後でどうにか出来る」は本当に強いです。
撮影中にオドオドと困り顔をしては「大丈夫なのかコイツ」とお客様を不安にさせてしまいますが、平然と仕事をしていれば安心感が違います。
そして仕上がった写真を見てしっかりとこなせていれば信頼感が一気に増して「また頼みたい!」と感じていただくことが出来ます。
なのでレタッチの技術や知識は、写真のクオリティーをあげることは勿論ですが、自分への自身とお客様の信頼を得る最強の武器へなり得ます。
これから写真を仕事にしたいのであれば、実践の経験が少なくても戦い抜けるレタッチは必須級でしょう!
デザイン・媒体への知識
これから写真を仕事にする上で、圧倒的に足りないのが実績。
これまでの実績がないと、信用されにくいのは事実です。
ですが大量の実績がないと信用してもらえないかと言われれば、そうでもありません。
割とどこかの企業の撮影をしていれば、多くなくても信頼してもらえます。
でもその足がかりとなる初めの依頼を受けるためには、どうしたら良いか分からないですよね。
これが「デザイン・媒体への知識」を持つことできっかけに繋がります。
以前の記事でもお伝えしていますが、写真の買い手の多くは企業になります。
このあたりの詳しい内容は以前の記事を読んでいただきたいと思いますが、要は目的があって写真を必要としています。
- チラシなどの広告媒体
- ポスターやメニュー自社ツール
- HPやSNSへの発信用
こういったものに使用されるケースが多く、最終形としては写真単体で使いといったことは少ないのです。
そのため、どのような用途で使うのを知って、それに合う状態でデータをお渡ししたり、さらに良くなる提案が出来れば頼んでみたいという考えをしてもらえます。
SNS用なら必要以上の解像度はいらないのでリサイズした画像もお渡しできること、ポスター用なら文字が入るであろう位置を想定し敢えて空間の空いた余白のある写真の撮影を提案したり。
「あなたの困りごとがわかっている」
頼まれた方の本来の目的は「写真の撮影」ではなく、「撮影したものを発信」して集客や売上を伸ばすことが目的なので、そのことを理解していると伝えられれば頼りにしてもらえます。
そのためにいはやはり、最終がどうなるかをわかるためにデザインや媒体への知識が必要になってきます。
逆に言えば、撮影技術が一流で格好いい写真が撮れても「写真が格好いい」だけの写真なんかより、意図を汲んだ写真を撮れる方の方が信頼関係が気づけます。
たまに、以前に他のカメラマンに頼んで撮影した写真を見せてもらうことがありますが「なんじゃこりゃ?」と思う場面に遭遇します。
商品撮影で撮影されているのに、商品の大きさに合わせて横の構図・縦の構図だけで納品されていたり。
一見それでも良い感じがしますが、HPやメニューで一覧で紹介するときに縦横の構図バラバラだったら見にくいしダサいですよね。
結局デザインされる方は一部切って同じ構図で配置するでしょうし、ピントや背景のボケ具合にもばらつきが出てしまいます。
これって後にどう使われるかの考慮が全然なされてないと思います。
でも一見すると良い写真に見えるのでその時はOKを出すのですが、いざ媒体に落とし込むとあんまり良くない。
こんなカメラマンもざらにいるんです。
ですからデザイン・媒体の知識を得ることで相手に寄り添える知識があることは、カメラマンに頼んで失敗している人ほど共感してもらえます。
なのでこの知識を持っておくことは、一番撮影からは離れているかもしれませんが、仕事自体を獲得するためには必要なものです。
まとめ
今回、趣味と仕事で写真撮影に必要な技術や知識4つをお伝えしました。
4つもあるかと感じるか4つしか無いと感じるかは人それぞれですが、どれも家に居ながら習得することが可能なことが大きいです。
- 短時間で効率よく撮影する段取り・スケジューリングの考え
- ライティング=光の扱い方で撮影する被写体を印象的にする知識
- レタッチの技術や知識による状況対応力と自分への自信
- デザイン、媒体の知識から相手へ寄り添えられる信頼感
カメラマンって職人的なイメージもあるかもしれませんが、写真の買い手側はそんなこと求めていません。
アーティスト気取りのめんどくさい奴より、気軽に頼めて意図を汲み取ってくれる頼もしい人の方が依頼したいに決まっています。
この事にスポットを当てて取り組めば、写真は仕事にできるのです。