最近、強い紫外線対策としてサングラスを使っている人が多くなりました。
グレーのサングラスをかけると、山の緑が鮮やかに見えるという経験はありませんか?
PLフィルターはレンズにサングラスと同じ効果を与えてくれます。
PLフィルターとは
PLフィルターのPLとはPolarized Lightの略で日本語に訳すと偏光となります。
グレーのサングラスには、よく偏光レンズが使われています。
偏光レンズには、光の方向を整えてギラツキを抑える効果があります。
偏光レンズのサングラスをかけると、他の色付きサングラスに比べると視界はそれほど暗くなりませんが、クリアな視界となります。
それは偏光レンズによるものです。
そんな偏光レンズを使ったPLフィルターをレンズに付けると似たような効果で鮮やかな写真を取ることができます。
偏光レンズの仕組み
それでは偏光レンズがどの様な仕組みとなっているのか見ていきましょう。
光の性質
偏光レンズの仕組みを理解するには、光の性質を知る必要があります。
光には粒子の性質と波の性質の両方を併せ持った不思議な性質があります。
このことは光量子論としてアインシュタインが発表していますが、光子の存在自体、完全に解明されてはおらず全てを理解しようとすると沼にハマる可能性があります。
偏光レンズを理解する上では、光は進行方向に対して様々な方向に波のように振動しているということだけは頭に入れてください。
偏光レンズの仕組み
偏光レンズは、一方向に細いスリットが並んでいて、スリットの外側には光を吸収するヨウ素がありスリット方向に振動する光しか通過できないようになっています。
もちろんスリットの幅は目に見えない微細な幅です。
偏光レンズを通過したあとの光は全て同じ方向に振動しているので、2枚の偏光レンズのスリット方向を90度ズラせば真っ暗になります。
このことは偏光レンズが2枚無くても、偏光サングラスで液晶画面を見るとわかります。
液晶にも偏光レンズがつかわれているので、偏光サングラスをしたまま液晶を見て、首を傾けると画面が真っ黒になります。
偏光レンズを通過した光は全て同一方向に振動する光となり、スリットに対して水平に振動する光はシャットアウトされます。
しかし、斜め方向に振動する光は、完全シャットアウトされるのではなく、一部が縦方向へと向きを変えて通過します。
そのため、偏光レンズでは大きく暗くなることなく光の向きを整えることができます。
偏光レンズを使ったPLフィルターの効果
PLフィルターを使った効果は大きく2つあります。
反射を抑える。
コントラストを上げる。
この2点です。
これはどちらもPLフィルターによってカメラに入ってくる光が同一方向に整理されたことの効果です。
反射した光、特に水面などで乱反射した光は様々な方向に振動しています。
それが偏光されることで光の方向が整い反射光が少なくなります。
また、乱反射した光が制限されることで、被写体が反射した本来の光がハッキリカメラに入ってくるようになるので、コントラストも上がって見えます。
PLフィルターを使ったおすすめのシーン・スポット
そんな効果をもったPLフィルターですが具体的な撮影シーンを見ていきましょう。
PLフィルターの使い方
PLフィルターの使い方は他のフィルターと同じです。
ただし、保護フィルターを使っている場合は、重ね付けせずに保護フィルターを外して、直接レンズにPLフィルターを装着した方が良いでしょう。
保護フィルターに重ね付けしても特に問題なく撮影できることもありますが、ケラレやフレア、ゴーストの原因となることもあります。
余計な光学系を増やさないということは高画質で撮影するためにはとても重要なことなので、保護フィルターは外す方がベターです。
PLフィルターを装着したあとは、撮影するだけなのですが、PLフィルターには偏光の向きを変えるためにフィルターをクルクル回せる機能があります。
撮影時はクルクル回して偏光効果の変化をチェックしながらベストな偏光方向で撮影します。
風景写真
PLフィルターが最も活躍するのが風景撮影です。
山の深い緑を表現するのはPLフィルターが最も得意とする分野です。
もちろん、緑だけでなく、紅葉や桜など季節で変わる風景を撮影するときに活躍します。
空写真
PLフィルターは山の緑以外にも、空の青を濃くするとき使われることもあります。
空は見た目では青くても、カメラで撮影すると意外と白っぽく写って残念なことありますよね。
PLフィルターを使うことで空の青も濃くなります。
ただし、PLフィルターで空を撮るときは注意も必要です。
空は太陽を背にして、つまり順光で撮影したときに最も青が濃くなり、逆光で撮影すると白っぽくなります。
逆光ではPLフィルターを使ったとしても、やはり白っぽくなるので、濃い青の空を撮るときは順光で撮影することが必要です。
もう1つの注意点として偏光ムラがあります。
広角レンズにPLフィルターを装着して撮影した場合、偏光レンズの効果にムラがでて、空の青が濃い部分と白い部分が出てしまうことがあります。
これは空写真だけでなく、風景写真でも広角撮影ではおなじ現象が起こります。
対策としては広角用のPLフィルターを選ぶことと、撮影後に編集ソフトで加工する方法があります。
広角レンズにPLフィルターを装着するときは偏光ムラに注意です。
反射を抑えた写真
水面やガラス越しの撮影で反射が気になるときなどもPLフィルターの出番となります。
完全に全ての反射を抑えることはできませんが、状況によってはかなりクリアに撮影することができます。
PLフィルターには向きや角度で効果の強さが変わってきます。
反射を抑える撮影をするときは、様々な角度を試してベストな効果を得られるポジションを探すと良いでしょう。
C-PLフィルターとは
C-PLフィルターについては、PLフィルターについてしっかり理解していれば、あまり気にすることはありません。
なぜなら、市場に出回っている多くのPLフィルターがC-PLフィルターだからです。
単に偏光レンズを1枚だけ使ったPLフィルターをそのままデジタルカメラに装着すると、AFやAEがうまく作動しないことがあります。
AFやAEが光を測定するセンサーには偏光膜がよく使われています。
そのため、PLフィルターを使うと偏光の向きでAFやAEが作動しないことがあります。
これを防止するために、偏光レンズに位相差フィルムを組み合わせたC-PLフィルターが作られました。
位相差フィルムは、簡単に言うと、単一方向に振動した光の振動方向を回転させるフィルムです。
C-PLフィルターを通過した光はネジの様に振動方向をぐるぐる回転させながら進むので、偏光膜を使ったAFやAEセンターにも光を届けることができます。
デジタルカメラ全盛の今の時代はほとんどのPLフィルターがC-PLフィルターで、C-PLもしくはサーキュラーPLなどと書かれています。
位相差フィルムを使っていない純粋なPLフィルターはかなり探さないと売られていないので、このことはそこまで神経質にならなくても大丈夫です。