中国メーカー製というとどういうイメージがあるでしょう?
中国の圧倒的なマンパワーで生み出される商品は、価格は安いが、一気に量産されるため信頼性に欠けると言ったイメージや、オリジナリティに欠けるといったイメージを持つ人が多いかもしれません。
しかし、LAOWAというレンズメーカーは今までの中国メーカーのイメージを覆し、日本市場にも浸透しようとしています。
新しいレンズメーカーLAOWAとは
レンズなどの光学製品は日本とドイツが長年の歴史で培われた高い工作精度による品質と信頼性で圧倒的シェアを誇っています。
そんな中、中国メーカーでありながら、しかも日本市場において、2016年に登場して以来、やにわに注目を集めることとなったのがLAOWAです。
LAOWAはいわゆるレンズ専業メーカーで、様々なレンズを製造、販売しています。
レンズメーカーとしては、日本ではTAMRON、SIGMAがあり、純正レンズとこれらのサードパーティレンズで既にお腹いっぱいといった感じがあります。
にも関わらず、LAOWAはオリジナリティ溢れるレンズで日本のカメラ愛好家の心の隙間に侵入してきています。
LAOWAの創業者である李大勇氏は経営者でありながらレンズ開発者でもあります。
元々、日系大手光学メーカーで光学設計技術者として働いていて、その後オリジナルのレンズを完成させLAOWAを創業しました。
そんな李氏はSNSなどでプロの写真家や一般のユーザーと積極的にコミュニケーションを取り、ユーザーが持つ既存のレンズラインナップへの不満点や要求などを吸い上げて製品化するという方法をとっています。
そのため、LAOWAでは、たくさん売れるレンズというよりも、一部のユーザーが絶対に買うレンズというものが多く作られています。
LAOWAの特徴
LAOWAはシフトレンズとマクロレンズから開発をスタートさせたメーカーです。
一般的に一眼レンズというと24-70mmのような標準域のレンズというのが真っ先に思い浮かびます。
次に200mmを超えるような望遠レンズ。
そして、18mm以下の広角といったように買い揃えたりするので、レンズメーカーもそういったラインナップでレンズを販売するのですが、LAOWAはマクロとシフトレンズから日本での販売をスタートさせました。
純正レンズや既存のレンズメーカーとは違うアプローチをすることで、その存在感を示しているのです。
サードパーティのレンズというと、純正が高価で手が出せないのでその代りに購入するというパターンもありますが、LAOWAの場合は他では販売されていないレンズだからLAOWAのレンズを買うということになります。
LAOWAのおすすめレンズ
LAOWAにはおすすめレンズありません。
これは、LAOWAのレンズの品質が良くないなどの悪い意味ではありません。
LAOWAのレンズは全てが独創的なので、他人に勧められて買うというよりも、自分で「こんなレンズがあったらいいな」と考えたときにそれを探すためのメーカーだからです。
また、AFにも対応していないので、誰が撮っても綺麗に撮れるレンズというものは少なく、レンズを使いこなすことが重要になります。
ですから、ここではおすすめではなく、その独創的なレンズラインナップをご紹介します。
25mm f/2.8 2.5-5X ULTRA MACRO
これぞLAOWAというようなレンズがこのレンズです。
撮影倍率が最大で5倍という驚きのレンズです。
通常、レンズを選ぶ時は焦点距離や開放F値に注目しますが、あまり撮影倍率にまでは注目しませんよね。
撮影倍率とは、イメージセンサーに、実像の何倍の像が写るかという倍率で、通常はマクロレンズでも1倍以下です。
24-70mmの標準レンズでは0.25倍くらいが一般的です。
それが、なんと5倍です。
マクロレンズというよりも、虫眼鏡や顕微鏡に近いイメージです。
7.5mm F2 MFT
7.5mmというのはあまり聞き慣れない焦点距離ですが、マイクロフォーサーズ用の超広角レンズです。
マイクロフォーサーズカメラはイメージセンサーが小さいので画角が小さく、フルサイズに比べると超広角撮影には不向きといえます。
マイクロフォーサーズ用の超広角レンズは今までも発売されてはいるのですが、光学的にどうしても前玉が大きく飛び出した魚眼になってしまい、フィルターがつけられないという不便さがありました。
しかし、LAOWAは非魚眼の超広角レンズを作ることに成功しました。
それによって、フィルターが取り付け可能なマイクロフォーサーズ用超広角レンズが市場に登場しました。
マジック シフト コンバーター
これは単体のレンズではなくコンバーターです。
これをレンズとボディの間に挟むことで、通常のレンズをシフトレンズにすることができます。
シフトレンズは特徴的な描写ができるレンズですが、撮影機会は決して多くないので、高価なレンズをわざわざ買うか迷いどころでもあります。
コンバーターで対応できるなら、出費は最小限に抑えられます。
この様に、LAOWAのレンズラインナップには万人が買って満足するようなレンズはほぼありません。
その代わり、欲しい人にとっては喉から手が出るほど欲しいレンズがあります。
CP+2019で注目を集めた虫の目レンズ
CP+2019では、虫の目レンズでLAOWAが注目を集めました。
虫の目レンズとは
虫の眼レンズとは、一言で説明するなら、マクロ広角レンズです。
マクロレンズは一般的には画角が狭く、虫などを撮影すると背景はあまり写らない上に大きくボケてしまうという欠点がありました。
自然環境で虫を撮影しても周辺環境が写らないので、どういう場所に生息している虫かということが伝わりにくい写真になってしまうのです。
そこで、接写可能なマクロレンズでありながら、周辺環境も撮影できるように開発されたのが虫の眼レンズです。
虫の眼レンズといえば栗林慧!気になる特許は?
そもそも虫の眼レンズを有名にしたのはLAOWAではなく昆虫写真家の栗林慧氏です。
栗林氏はそれまで市場になかった虫の眼レンズを自分で開発し、独創的な昆虫写真を撮って注目を集めました。
細長い鏡筒が特徴のそのレンズはLAOWAの虫の眼レンズとほぼ同じ形で、特許侵害なのではないかという疑問を持つ人もいることでしょう。
レンズの特許というのは、レンズの組み合わせなどの光学設計に対して適用されます。
レンズの外見は独自のデザインというよりも、レンズを固定するための機能的な形状なので特許適用外です。
そもそも、栗林氏も「虫の眼レンズの理論は昔からあるもので、市販化されていないから作った」と語っていて、虫の眼レンズが完全オリジナル発明ではないとしています。
個人的には栗林慧氏監修の虫の眼レンズが欲しいところですが、残念ながら商品化されていません。
そのため、昆虫写真愛好家は虫の目レンズを自作したりしていました。
LAOWAの虫の眼レンズ LAOWA 24mm F14 2X MACRO PROBE
LAOWAは今まで自作するしかなかった虫の眼レンズを市販化しました。
外見は虫の目レンズそのもので、最大撮影倍率は2倍で最短撮影距離は470mm。
470mmというとあまり寄れない印象を受けるかもしれませんが、鏡筒が400mm以上あるので実際には前玉から被写体の距離は数mmでの接写が可能です。
更にLAOWAの虫の眼レンズはレンズ先端部にLEDリングライトを装備し、防水仕様とすることで、レンズの先端を水中に入れて、水生生物の撮影も可能となりました。
この様にLAOWAは今まで欲しかったけど無かったレンズや、全く新しいレンズといった他社とは全く違ったアプローチで注目を集めるメーカーです。
2013年創業の若いメーカーということで、AFへの対応など、技術的にはこれからという面もありますが、LAOWAにしかないレンズがあるので今度の動向から目が離せません。