カメラメーカーの勢力図は今までも時代の流れとともに変化をしてきてきました。
そして、これからも変化し続けることは当然です。
ただ、近年、圧倒的なシェアを誇っていたCanonの牙城がこうも簡単に崩されるとは誰が予想したでしょう。
まさに大変革期にある一眼カメラのメーカー勢力図をみていきましょう。
オリンピックと共に変遷してきたプロユース一眼カメラの歴史
オリンピックに一眼レフカメラが登場したのは1960年代までさかのぼります。
それまではレンジファインダーカメラが主流でしたが、Nikonが一眼レフカメラに路線を切り替え、ドイツメーカーのレンジファインダーが主流となっていたカメラ市場に食い込んでいきました。
1964年の東京オリンピックではプロが使うカメラはNikon一色といった状況にまでなりました。
一方、日本の2大カメラメーカーのもう一つであるCanonは当初はアマチュア向けのいわゆる「売れるカメラ」を中止として生産しており、プロはNikon、大衆はCanonという構図が出来ていました。
しかし、Canonもプロが使えば大衆への宣伝効果が高いということに気づき、プロ市場において攻勢に出ますが、結果が伴ってきたのは1990年にAF機能が登場したことがきっかけでした。
Canonは高速AFを導入するために従来のFマウントからEFマウントに切り替え、アトランタオリンピックではついにプロユースにおいてNikonに追いつくことに成功します。
次に市場が動いたのはフィルムからデジタルカメラに変わる2000年代前後です。
プロ向けデジタル一眼レフEOS-1Dsでプロ市場を席巻したCanonは2004年アテネオリンピックでは圧倒的なシェアとなっていました。
その後、NikonはD3をきっかけに北京オリンピック、ロンドンオリンピックと徐々にシェアを盛り返し、2016年リオオリンピックではプロユースにおいては拮抗したシェアとなっています。
このように一眼カメラ、特にプロが使うカメラは夏季オリンピックと共にCanonとNikonがシェアを競ってきました。
まさに一発逆転のSONY
プロが使うカメラは、デジタルカメラにおいてはフルサイズセンサーが基本となっています。
フルサイズセンサーはAPS-Cに比べると取り込める光の量が多く、画質良くなるので、特殊な用途を除けばフルサイズが基本となります。
そんなフルサイズ市場は前述の通り、これまではCanonとNikonの2社が鎬を削り、2社で独占ともいえるシェアとなっていました。
そんなフルサイズ一眼カメラ市場で2019年は驚きのランキングが発表されました。
なんと2018年フルサイズ一眼カメラシェアトップはSONYだったのです。
これはフルサイズミラーレスだけでなく、レフ機も合わせたフルサイズ市場全体においての話です。
もちろん、2018年は夏季オリンピック開催年のちょうど中間ということでCanonもNikonもフラッグシップ機には変化がなく、フルサイズ一眼レフ市場が落ち着いていたという理由も考えられます。
それを考慮しても、フルサイズミラーレスだけで、フルサイズ市場を席巻したSONYは恐るべき成長を遂げたと言えます。
これは、いかに市場が使えるフルサイズミラーレスを求めていたかということでもあり、かつてフィルムからデジタルになったように、レフ機からミラーレス機への移行は避けられない流れになっているということでもあります。
カメラマウントがSONYの強み
SONYのフルミラがここまで大きな躍進を遂げた理由はレンズマウントにあります。
ソニーはフルサイズミラーレス用のEマウントを発表したときに、マウントの仕様を公開することで、他社のレンズメーカーがEマウントレンズを開発しやすい環境にしました。
またミラーレスならではのショートフランジバックによってレフ機のレンズがマウントアダプターで使えるので、CanonやNikonのレンズ資産を手放すことなくSONYのフルミラに移行できます。
逆に言うと、CanonやNikonへ戻るということも容易なので、今後発売されるフルミラの性能というものは各社シェアを争う上でとても大切になります。
フルサイズミラーレスで先行したSONYの優位はしばらく続くと予想する経済アナリストもいるので、2018年のシェアをSONYがどこまで守り、広げていくのか注目です。
一眼市場全体はまだCanonが圧倒的
フルサイズ市場においてはSONYにトップを奪われたCanonですが、レンズ交換式カメラ、一眼カメラ全体で見ると、2018年で16年連続トップとまだまだカメラ業界絶対王者の地位は安泰な様子です。
プロが使うカメラはプロカメラマンとコアなアマチュアユーザーのみがターゲットとなり、一眼カメラ市場全体としてみれば売上はさほど大きくありません。
一眼カメラ市場は10万円前後の価格帯がボリュームゾーンとされています。
ボリュームゾーンとは簡単に言うと、最も売れる価格帯のことで、ターゲットはアマチュア写真愛好家だけでなく、子供の写真など思い出写真や記録写真を撮るユーザーもターゲットになってきます。
この価格帯は元々、Canonの独壇場に近くなっていて、フルサイズでSONYが有利となっても、まだまだCanonとSONYのカメラ市場全体のシェアとしては開きがあります。
カメラグランプリ2019はCanon、Nikon、SONY以外から
一眼カメラにおいてはカメラシェアというのはとても重要です。
カメラシェアの大きなメーカーほどサードパーティも含めてレンズラインアップが充実するので、大手メーカーから選ぶということはカメラ選びの基本となります。
一眼カメラといえば、CanonとNikon、そしてフルミラで躍進したSONYがまっ先に思い浮かびますが、シェアが少なくともOLYMPUS、PENTAX、Panasonicなども実に注目すべきカメラを作っています。
そのことを証明するかのように、カメラグランプリ2019は大手ではなく、この3メーカーの一眼カメラが選ばれました。
カメラグランプリ2019
カメラグランプリはカメラ雑誌の編集者などで構成されるカメラ記者クラブが主催して一年間で発売されたカメラの中から優れた製品に賞が与えられます。
カメラグランプリ2019大賞
カメラグランプリ2019大賞はPanasonicのLUMIX S1Rでした。
LUMIX S1RはPanasonic初のフルサイズミラーレスですが、同じく自社初のフルサイズミラーレスを発売したCanon、Nikonを抑えての受賞となりました。
Panasonicは世界初のミラーレス一眼を発売したメーカーで、ミラーレスの歴史で言えばSONYよりも古く、同社初のフルミラでも完成度は高く、ハイレゾモードなどの高機能も評価されました。
また、PanasonicはLeica、SIGMAとLマウントアライアンスを結んだことで、マイナーシェアのカメラにありがちなレンズ不足という問題をクリアしたことも高い評価の理由となっています。
通常、一眼カメラのレンズマウントは各社異なっているので、他社のレンズを使うにはマウントアダプターが必要です。
しかし、マウントアダプターは物理的な条件があり、どんなメーカー間でも作れるものではありません。
そこで、Lマウントアライアンスによって3社のカメラはレンズを自由に使えるので、シェアが小さいカメラはレンズの選択肢が少ないという状況を打破できるのです。
カメラグランプリ2019 あなたが選ぶベストカメラ賞
読者投票によって選ばれるこの賞はOLYMPUSのOM-D E-M1Xが選ばれました。
OLYMPUSはミラーレスにおいては、発売こそPanasonicに遅れましたがSONYが躍進する前までは第一人者でした。
OLYMPUSはフィルム時代からマイクロフォーサーズという小さなフィルムサイズを採用しており、デジタルカメラになってもそのマウントを継承し、マイクロフォーサーズのセンサーサイズを採用したカメラを作り続けています。
OM-D E-M1Xはマイクロフォーサーズでありながら、縦位置グリップを採用した意欲作で、手持ちハイレゾショットという特徴的な機能を搭載しています。
読者が選ぶベストカメラに選ばれたということは、かなり消費者のニーズを満たすカメラであるということで、大きなセンサーサイズに必要性を感じないならばOLYMPUSのカメラは要チェックです。
カメラ記者クラブ賞
カメラ記者クラブ賞は一眼カメラではありませんが、RICOH GR IIIが選ばれました。
GRはRICOHが1996年に発売したフィルムカメラから続くコンパクトカメラのシリーズで、「最強のSnap Shooter」というコンセプトで、高画質、携帯性、速写性などを追求しています。
コンパクトカメラはもはやスマホカメラに押されて絶滅危惧とまでされていますが、GR IIIは一眼カメラユーザーからの支持も厚く、サブ機として持ち歩く写真愛好家が数多くいます。
そんなGR IIIを発売しているRICOHは2011年のPENTAX買収により、一眼カメラメーカーとなりました。
GR IIIで高い評価を集めるRICOHがPENTAXとしてどの様な一眼カメラを作っていくのか楽しみです。
勢力図はどうなっていくのか
一眼カメラといえばCanonとNikonの独占市場とも言われてきましたが、ミラーレス、特にフルサイズミラーレスの登場で一変してきています。
ただし、CanonとNikonは2019年はまだフルサイズミラーレスのフラッグシップ機は発売しておらず、現状、フルサイズミラーレスを求め他社に流出しているユーザーがフラッグシップ機やそれに準ずるカメラの発売で戻ってくる可能性もあります。
フラッグシップ機発売のタイミングとしてはやはりオリンピックです。
2020年東京オリンピックではカメラマン席にどのメーカーのカメラが多く並ぶかは大注目となります。