「レンズ沼」って言葉はカメラを使っている方なら一度は聞いたことがあるフレーズでしょう。
私はレンズ沼にハマっている方からすれば「そんなのハマっているうちにも入らないよ」ってくらいのひよっこですが、それでも数えてみると11本のレンズを持っています。
よくよく考えてみると、普通にカメラを持ってない方からしたら「充分多くない?」と思われても仕方のない数のような気もします。
てことは気づかぬうちに私もしっかりレンズ沼にハマっているのではなかろうか?
怖い、、自覚はないのが特に。
レンズ沼上級者に比べれば、安いレンズしか買っていないので傷にもならんと思っていましたが、計算してみると一番最初に買った一眼レフカメラのズームレンズキットの2つのレンズを抜きにしても29万ほど使っていました。
約30万!
軽度と考えていた私ですらレンズに30万ほど使っていたなんて。
お金がある方からすれば、一発で30万のレンズを買う人もいるわけですからヌルいと思われても、それはあくまでカメラを生業にしたりレンズ沼にハマってしまった人の考え。
「これからカメラを始めようとか」「メラを買って新しいレンズが欲しいな」と思っている方にとっては「何でそうなっちゃうの?」って恐怖がありませんか。
心のそこに実はちょっぴりあるのではないですか?
実は私もカメラを始める時にそう思っていました。
初めて一眼レフカメラで撮影した時に「すごい綺麗に撮れる!」と感動しましたし、これなら技術を極めればそこそこのレンズでもいけるじゃんね、と。
でも、そうは問屋が卸さなかったのです。
なぜそうなってしまうのか、レンズ沼にハマってしまう人をパターン(きっかけ)と特徴(なぜ集めてしまうのか)に分けて考察していきます。
レンズ沼にハマってしまうパターン
まずはレンズ沼にハマってしまうパターン(きっかけ)から。
このパターンを読むときっと他人事ではない、忍び寄る罠がいくつもあるのが分かってきます。
そして「回避するの無理じゃない?」と思ってしまうかも。
そう、大なり小なりカメラをやっているとその片鱗に触れざるを得ないのかもしれません。
レンズを理解するほど制約のジレンマにぶつかる
初めは満足していたカメラの性能も理解が深まるにつれ、徐々に他の方が撮影しているものと比べて足りないように感じてきます。
特にそれを感じるのが画角とF値。
分かればわかるほど、今のレンズでは自分が思い描く撮影ができないことに気づき、新しいレンズへの欲求が高まっていきます。
画角の制約
例えば私が一番初めに買った一眼レフカメラは「Canon EOS Kiss X8i ダブルズームキット」だったのですが、こちらを例にするとダブルズームキットについていたレンズは「EF-S18-55mm」と「EF-S55-250mm」
標準ズームレンズと望遠レンズの組み合わせで、最初こそ満足していましたが雑誌などを見ているときに感じます。
「雑誌で写っている景色はもっと広い範囲を写しているのに私のでは出来ない」と。
これはカメラのセンサーサイズによっても変わってきますが(APS-Cサイズとフルサイズでは1.5倍ほどの画角の差)、大きな範囲を撮影出来ないのはレンズの撮影できる画角の差だと言うことに、この時に気づきました。
「EF-S18-55mm」のレンズだと「18mm」以上の広い画角は撮れない。このレンズの制約を分かると、途端に今まで撮れない写真が撮れるレンズへの関心が一気に湧いてくるのです。
結果、買ってしまったのがこちらのシグマのレンズ。
画角が「10-20mm」とAPS-Cサイズの中でもかなり広いものを4万ほどで購入しました。
この時、他の候補もありましたが「この画角でこの金額なら安い」そう思っていた時点で、すでにレンズ沼のほとりに立っていたのかもしれません。
私の場合は広角レンズでしたが、「マクロ」や「超望遠」などそのレンズでしか撮れないものはまだまだあります。
ほぼと言っていいほど、この機会はやってくるでしょう。
F値による明るさの制約
画角同様にレンズが分かってくると「F値」と呼ばれるレンズの明るくできる範囲があることを知ります。
レンズの仕組みの細かな部分は省きますが、明るくできればできるほど一眼レフカメラなどの写真でよく見られる「ぼけ味」が上手く表現できるようになります。
ポートレート写真などでよく見られる人物はシャープに写っているのに、背景はふんわりとボケている状態のことです。
その他にもシャッター速度やISO感度で明るくは出来ますが、シャッター速度は遅くすればするほど明るくなる代わりに手ブレし易くなり、ISO感度は明るくするほど画質が劣化していきます。
ここまで分かってくると「F値が低いことこそ正義」と思い込みはじめます。
実際にはフルサイズレンズを例に出しますと「SONY FE 24-105mm F4 G OSS」など、F値が低くないレンズでも綺麗な描写力で良いレンズはあるのですが、これは色々試して見た結果分かることなので「F値の低い」明るいレンズが欲しくて堪らなくなってきます。
またそこにはメーカーの罠が存在しており、次項ではそちらについて話していきます。
どちらにせよ「もっとこんな写真が撮りたい」と思った時に、レンズの性能でどうにかしようと考えた時点で、すでに片足がレンズ沼のちょっと浸かっているのかもしれません。
撒き餌レンズによるユーザーへの餌付け
レンズが分かってきたところで初期にカメラとセットになっていたレンズでは、まずカメラで憧れる「ぼけ味」が上手く表現出来ないことを思い知らされます。
「ぼけ味」をもっと出したいと願っている頃に行き着くのが「撒き餌レンズ」なるレンズの存在。
通称「撒き餌レンズ」と呼ばれるレンズは、大体の画角が50mmの「F1.8」であるにも関わらず非常に安い価格で販売されているレンズのことです。(50mm以外の画角もありますが、F値が低いのが特徴)
「撒き餌レンズ」なる名称からも察することが出来ますが、各メーカーがレンズの魅力に誘うために仕掛けているレンズなのです。
Canonですと超有名なところで「EF50mm F1.8 STM」がまさにそうです。
この仕掛けは分かっていても逃れることが出来ません。
なんせ初期装備では「ぼけ味」が上手く表現出来なかったのに、そこにうってつけのレンズが非常に安い価格で販売されていることを知ってしまったら誰が抗えるでしょう。
ここでカメラを辞めてしまえば回避できるかもしれませんが、カメラを手にした人の多くが「ぼけ味」を味わいたいと少なからず思いながら購入に至っているはずなので、もはや入れ食い状態になっているのですから。
安いと思い購入した「撒き餌レンズ」は、想像以上に良い意味でも悪い意味でも満足させてくれます。
「そうそう!こんなのが撮影したかった」と。
良い意味では各メーカーがレンズの魅力を知ってもらうために作られたものなのでコストパフォーマンスがとても良いこと。
悪い意味ではレンズの魅力にハマってしまうきっかけになってしまうこと。
ほぼ回避不能と言ってもいいかもしれませんね(笑)
レンズが資産になるという概念
先程までにお話した内容は、人によってはそこで十分に満足して元の世界に帰還してくる方もいます。
これはこれで、一つの良い距離感でカメラを使っている方だと思います。
ただ先ほどまでは割と回避不能なパターン・きっかけの代わりに、そこで満足することができれば良いのに対して、このパターンに陥ると加速度的にレンズ沼にハマっていってしまう概念のように思います。
「レンズは資産」
なんとなく聞いたことがあるかもしれませんが、この考え方があってると言えばあっているので余計に厄介です。
カメラは最新機種が次々と発売されると、以前のモデルはどんどん価格が下がっていきます。
対してレンズは電子接点などの今のカメラに合わせた構造の有無はありますが、基本的な構造が変わらないことと、優れたレンズであればあるほど今でも十分に使うことができます。
むしろ今になってより性能を発揮出来るレンズだってあります。
そのためレンズは年月が経ってもあまり価格が下がらないことと「売って」も高い金額で買い取ってもらえることが「レンズは資産」と言われる所以です。
私が持っている「TAMRON タムロン 28-75mm F/2.8 Di III RXD」とかですと、ヨドバシカメラで税込9万円ほどで購入しましたが、今売ったとしても大体6万後半で買い取ってもらうことが可能です。
売ることも視野に入れると「実質2万ちょい」で購入して使っていることになります。
実質、、
「この実質◯◯円で〜」のくだりは、レンズ沼中毒者の方がよく仰られるキラーワードのような気がします。
レンズ沼中毒者の中でも重度の方になると、今あるレンズの買取と新しく購入予定のレンズの価格を天秤にかけて価格が釣り合うと「実質無料」と考えられる末期症状を患っている方もよく目撃します。
これもすべては「レンズは資産」の名の下に計算された概念なので、この発想を持ってしまうと「レンズ沼の住人」になることが約束されてしまいます。
これまでのパターンの中で一番怖いのがこのパターンです。
この思想は持った時点でもはや手遅れ感が否めないので、くれぐれもご注意を。
レンズ沼にハマってしまう特徴
次にきっかけからどんどんレンズ沼にハマってしまう人の特徴について。
こちらについてはその特徴によって「レンズ沼中毒者」になってしまう人の特徴が垣間見れると思います。
パターンはあくまできっかけにすぎませんが、こういった特徴や魅力を感じてしまうとやはり加速度的にはハマっていくような気がします。
コレクター的収集癖
このタイプの特徴を有している方はレンズにハマるかそれ以外のものんいハマるかの違いなだけで、重度の「レンズ沼中毒者」になること請け合いです。
レンズにもレアなものはありますし、性能よりもレア感を優先しだすと範囲も金額も青天井になっていきます。
写真の撮影自体よりもレンズ自体に固執し始めたら要注意。
撮ってなんぼのレンズですから使わなければ宝の持ち腐れと言いつつも、オブジェとして並べても様になるのがカメラやレンズの悪しきところなのかも。
カメラ共々、アンティークの分類にまで触手が伸びてしまうと破滅的かもしれません。
このタイプは滅多にいないとは思いますが、ほとんど使っていないレンズがあるにも関わらず「いつか使うだろう」と後生大事に持っているのも、ちょっとこの特徴に当てはまるのかも。
私も使っていないし、使う機会もなくなったレンズを保有していたりするので、人のことはいってられません。
いい意味で「レンズは資産」となるように、売るなりあげるなりして大事に使ってくれる方の元へ送り出してやるべきなんでしょうね。
単焦点レンズへの依存
ポートレート撮影やマクロでのブツ撮り撮影など、ベストの画角が決まってる方が特定の単焦点レンズを何本か所持して使用されているのはよく分かりますが、それ以外にも単焦点レンズへの依存があります。
ある程度カメラの撮影や知識を得てくると「単焦点>ズームレンズ」と、なぜか単焦点レンズの方が玄人・格好いい理論が発動しがちです。
そうなってくると高くてもある程度をカバーできるズームレンズをいいのに、単焦点レンズでそれぞれの画角をカバーしようとしてしまいます。
「SONY FE 24-105mm F4 G OSS」とかだったら、望遠以外のほとんどをカバーできるが「24mm」「50mm」「85mm」の単焦点をそれぞれ買ってみたり。
もちろん単焦点レンズの方がF値が低いものがあるので、単焦点でしか撮れない撮影はできますが「そこまでのクオリティーを表現するほどの腕前はあるのかい?」と問いたい。
そう私のことです。
上であげた例のような買い方はしていませんが「特段これといった画角にこだわりのない私が何をそこまで単焦点レンズにこだわる必要があるのか」と。
完璧に拗らせていました。
今となってはそこそこの金額でも「良いズームレンズ」にもっとも使う「単焦点レンズ」を1本あればいいかなと思う程度に緩和しました。
この拗らせ方は本当によくないです。
正直F値がそこそこでも安い単焦点レンズを何本も集めるより、高いズームレンズを大枚叩いてでも買った方が、利便的にも最終金額的にもいいような気がします。
高いレンズは数値でわかるF値以外に描写力だったりオートフォーカス精度がいいので、やはり高いだけのことはあります。
撮影する時の状況なども加味すると、臨機応変に対応できたり「今」って思った時にすぐに撮影できることの方が大事だってことに、今更ながらようやくわかってきたように感じます。
好きな画角がないのなら、そこまで単焦点レンズにこだわらない方がいいとお伝えするのが、私からの教訓です。
オールドレンズのオンリーワン感に惹きつけられる
「オールドレンズ 」ってご存知ですか?
知ってる人もいると思いますが名前の通り古いレンズのことです。
フィルムカメラ時代のレンズのことを指しますが、フルサイズミラーレスの台頭によって「オールドレンズ 」がマウントアダプターを介することで使用できます。
画像
むしろフルサイズミラーレスだと「ピーキング機能」と呼ばれるマニュアル撮影時のピント位置を色で表示する機能があるため、フィルムカメラ時代よりも当時のレンズが使いやすくなったとも言えます。
この「オールドレンズ 」には、ものによってそのレンズ固有に特徴を持っているレンズがあります。
「ぐるぐるボケ」と呼ばれる「HELIOS-44-2」などのロシアレンズに代表される特有のボケ味や
シャボン玉のような「バブルボケ」が発生するレンズも。
そのほかにも通常のゴーストとは異なる色味になるオールドレンズなどもあります。
また「オールドレンズ 」なので、それぞれのレンズが今までに使われてきた経緯があるので、ものによっては更に癖がある場合もあります。
でもそれもひっくるめて「ヴィンテージ」のような、自分しか持っていないレンズという独占欲が非常に満たされます。
癖があればあるほど「自分にしか撮れない」撮影が可能になってしまうのも、より魅力的な理由です。
こうなってくると運命の自分だけのレンズに巡り会いたくて、まるでソシャゲのガチャのように買い漁りたくなってきます。
これは恐ろしい。
「オールドレンズ 」自体は玉数が少ないものや元が高額なものでなければ、比較的に安いのも特徴で、「レンズ沼依存症」への特急券とも考えられるかもしれません。
ここも深みにハマれば、抜け出すのが非常に困難な特徴の一つと言えます。
レンズ沼にハマってもいいじゃないか!
ここまで喚起・注意を促してきましたが、別に「レンズ沼にハマったらダメ!」とは思っていません。
ただ「思わぬところに沼の入り口はあるよ」ってだけの話なので、自らレンズ沼に突っ込んでいく人を止めるような真似はしません。
むしろ深みにハマっていく様を見届けたいとさえ思っています。
ただ私の場合はレンズに本格的にハマる前にライティングやレタッチに興味が以降したので、深みにハマることはありませんでした。
次回はレンズ沼にハマってしまった時の脱出方法についてもお話したいなと思いますので、興味がある方は合わせて読んでいただけると幸いです。