一眼カメラの使い方に慣れると、絞り優先モードで撮影する機会が増えます。
フルオート露出での撮影から卒業して、絞り優先で撮影するとプロカメラマンに近づいた様な感じがしますね。
しかし、本当にカメラの「絞り」を理解していますか?
今一度、カメラの絞りの奥深さについて復習してみましょう。
なんでもかんでも開放で撮影するだけじゃない
一眼カメラは他のカメラと比較するとレンズが明るいのでとにかくボケが大きく出ます。
そのボケ味が楽しくて、絞り優先モードでもずっと開放絞りで撮影し続けることが多くなったりしませんか?
確かに背景が大きくボケて、主題となる被写体にフォーカスされた写真は一眼カメラならではですが、それだけが撮影の醍醐味ではありません。
絞りは上手にコントロールすることで、ボケ量以外にも様々な効果を生むことができます。
絞り値の基本
まずは絞り値、いわゆるF値について復習しておきましょう。
F値が大きくなればなるほどレンズ内の絞り羽は閉じていき、レンズを通る光は少なくなります。
基本の絞り値はF1.0,1.4、2、2.8、4、5.6、8、11、16、22とちょっと特殊な数字で増えていき、この数値のステップを1段と言います。
これはF値が絞りの半径を元にした数値で、絞り値が1段大きくなると絞りの開口部の面積が2倍変化する様に決められていることとからちょっと特殊な数列になります。
一眼カメラの場合は1/3段ごとまで細かく絞りを変化させることができます。
絞りで変わるのはボケだけじゃない
絞りで変わるのはボケ量だけじゃありません。
絞り値が1段変わると、露出を変化させない場合はシャッタスピードを1段変化させるか、ISO感度を変化させます。
逆に言うと、絞りを1段明るくすることで、シャッタスピードを1段速くしたり、その逆も可能です。
動いている被写体を高速シャッターでピタッと止めて撮影する場合や、逆にスローシャッターで流し撮りをする場合はシャッタスピードが重要になります。
シャッタースピードを速くするためには絞りを大きく開けて、短時間で光を多く取り込む必要があります。
シャッタスピードも絞りでコントロールすることができます。
絞りをコントロールすると光芒や玉ボケも変わる
スローシャッターといえば、夜景撮影も思い浮かびますが、ここでも絞りがポイントになります。
絞りが変わると光源から発生する光の筋、「光芒」も変化します。
F値を大きくすると、光芒の線の数が増えます。
F値と光芒の形の関係がわかれば、夜景写真を見るときに光芒の形からF値を推測することも可能です。
夜景撮影では絞りを使ってシャッタスピードや光芒、ボケ量をコントロールします。
また、夜景に限りませんが、キラキラ光るライトや木漏れ日、水面の反射などからピントを外して撮影すると玉ボケを作ることができます。
玉ボケはF値が大きくなると小さくなってしまうので、F値を5.6以下にすることである程度の大きさで撮影できます。
また、玉ボケの形は絞り羽の形状がそのまま現れるので、絞り羽の枚数がなるべく多く、円形に近い形で絞れるレンズの方が綺麗な玉ボケになります。
レンズを購入するときは絞り羽の形状もチェックしてみると良いでしょう。
明るいレンズでちょっと絞る理由
よく、レンズのレビューなどを読んでいると「2段くらい絞ることでシャープな描画となる」といった文言をよく目にします。
せっかくF2.8やF1.8などの明るいレンズを買ったのに、なぜ開放ではなく絞ってしまうのでしょう。
これにはちゃんと理由があります。
簡単に言うと、レンズの美味しいところを使うためです。
最近のレンズではかなり低減されていますが、レンズにはどうしても周辺光量落ちと収差という問題がつきまといます。
周辺光量落ちは文字通り、写真の周囲が暗くなってしまう現象で、収差とは被写体の一点から発せられた光が一点に収束しない現象で、色が滲んでしまう色収差や形がゆがむ歪曲収差などがあります。
これはレンズの端を通る光ほど顕著に現れるので、この影響を減らすために少し絞ってレンズの端に近い部分を通る光をカットしてあげるのです。
「開放でも眼を見張る描画」と称されるレンズも増えてきていますが、明るいレンズを持っているなら、少し絞って違いを確かめてみても面白いですね。
絞りすぎると小絞りボケ
風景撮影に限らず、絞り値を大きくしすぎる、絞りすぎても写真のシャープさは失われます。
これは小絞りボケと呼ばれる現象です。
光には波と同じ性質があるので小さな隙間を通過するときに光は回り込むように広がります。
この性質によって必要以上に絞るとピント面でも画像のシャープさは失われます。
長秒露光などでシャッタースピードを遅くするためにF値を極端に大きくする場合は、この小絞りボケとのバランスを見る必要があります。
風景撮影ではF8~F11が基本
風景撮影ではなるべく全体をシャープに描くため、絞りをF8など大きくします。
これは前述の様にレンズの美味しい部分、収差の少ない部分の光で撮影するという理由があります。
また、風景撮影ではボケ描写はあまり必要ないので、F8~F11などの絞りがよく使われます。
一方で絞りすぎると小絞りボケが発生したり、シャッタースピードが極端に遅くなってしまうのでF11以上にするときはそういった点に注意する必要があります。
AFのF2.8、F8センサー
絞りは露出に大きく影響を与えますが、オートフォーカス・AFにも影響を与えます。
説明書などで一眼レフのフォーカスポイントのページを見ると「F8測距対応」という文字を見ることができます。
通常、レフ機のAFセンサーは絞りをF5.6にしたときに測距できるようになっています。
例えば、F8まで絞って撮影していても、AF作動時はF5.6まで絞りは開いていて、撮影する瞬間にF8まで絞っています。
しかし、望遠レンズにテレコンなどを噛ませて開放F8になってしまうと、F5.6まで開くことができないのでAFセンサーが反応しなくなります。
そこでレフ機にはF8に対応したAFセンサーが部分的に採用されています。
ちなみに望遠ズームレンズなどでテレ端の開放がF5.6を下回っている場合でもF7くらいまでならAFセンサーが動いてくれます。
逆に大三元などの明るいレンズの場合は、開放F2.8などで撮影するときはピント範囲が狭いのでよりAF精度が求められます。
そのためF2.8に対応したAFセンサーが搭載されたレフ機もあります。
一方で、ミラーレス機の場合はあまりこういった表記はありません。
ミラーレスの像面位相差センサーは、レフ機の位相差センサーとは仕様が微妙に違うのでF8やF11くらいの絞りでも機能します。
またミラーレスの場合は位相差AFとコントラストAFをハイブリッドで使っているので、位相差センサーで測距できない場合はコントラストAFだけで測距します。
ただし、スピードの高い動きモノなどを撮影するときは、ミラーレスの場合は絞りすぎるとコントラストAFだけで測距するということは頭にいれておく必要があります。
まとめ
- 絞りはシャッタースピードや玉ボケ、光芒など様々な描画と関係
- 開放から少し絞るとレンズの美味しい部分が使える
- 位相差AFはF値の影響を受けることがある
せっかく一眼カメラの基本的な操作をマスターしたなら、絞り値は自在に使いこなしたい部分の1つです。
絞り値は単にボケをコントロールするだけでなく、シャッタースピードと連携させたり、周辺光量落ちや収差を避けるために絞ることもあります。
また、AFにシビアな撮影をするときは絞りが与える影響も考慮する必要があります。
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