私は今までに有名プロカメラマン の佐藤健寿さんと石川直樹さんの生のお話を聞く機会が運よくありました。
その中でもどういった撮影方法をとられているかのお話は、なかなか普段聞けないので興味深い内容です。
特に佐藤健寿さんは一眼レフカメラやフルサイズミラーレスなどデジカメでの撮影が多く、一方の石川直樹さんはフィルムカメラ一本です。
この対照的なカメラでは、やはり撮影方法は当然変わってくると思うのですが、どういった違いがあるのか比較してみたいと思います。
佐藤健寿さんから学ぶデジタルカメラでの撮影方法
自身が手がける写真集「奇界遺産」やテレビ「クレイジージャーニー」などでメディアへの露出も高い佐藤健寿さん。
以前の記事でも紹介していますが主に使用されているカメラは
なんとも豪華な顔ぶれです。
LEICAは雑誌などの味のある写真を撮影される時に使用されるそうで、「奇界遺産」の撮影などメインとなる撮影に現在では「SONY α7RⅢ」を使用されているようです。
佐藤健寿さんのお話が聞けたのはカメラの祭典「CP+2019」のイベントに伴い「α7RⅢと巡る真冬の中央アジア・奇界遺産の旅」が名古屋のソニーストアでも講演を開催されていたので、そちらで伺うことができました。
その中のお話は長くなるので、興味深い撮影方法についてのみ紹介します。
アンダー撮影でRAW現像で補正
風景を多く撮影される佐藤健寿さんですが、デジタルカメラなのでやはりアンダーめの撮影で、あとからRAW現像の際に色調補正をされています。
またストロボでの撮影も行わないようです。
「SONY α7RⅢ」は非常に解像度が高く、暗い場所でISO感度をあげても画像が破綻しにくいため、暗所でも補正できるギリギリのラインでそのまま撮影を行われます。
以前はレンズも何本も持っていっていたそうですが、現在ではレンズの性能がより上がったことから必要なレンズに絞って、より旅の中で撮影されるスタイルに特化した形に変更されています。
特に「α7RⅢと巡る真冬の中央アジア・奇界遺産の旅」の中では「SONY FE 24mm F1.4 GM SEL24F14GM」を多く使用し、かなりの軽量化が図れたようです。
この「SONY FE 24mm F1.4 GM SEL24F14GM」は2018年の10月頃に発売された最新のレンズでF値1.4と非常に明るいだけでなく、解放での広角撮影でも明るいのに解像度の高いシャープな映りを可能にしています。
確かに佐藤健寿さんの撮影スタイルに非常にマッチしているレンズですよね。
いくら明るく撮影できるレンズでも、広角レンズの魅力は広く撮影された写真が四隅までしっかり解像されていないと意味がありません。
広角レンズなのに、解放でやたらボケるようでは使えないですもんね。
そんな風景写真に適したレンズで撮影を行い、RAW現像でアンダーめになっている部分を中心に補正をして写真を完成させていきます。
色調補正のソフトに関しては触れられていませんでしたが、おそらく「Lightroom」あたりだと思います。
使われているカメラの種類が多いので、互換性の高い「Lightroom」であれば、それだけでどのカメラを使用しても問題がないためです。
RAW現像も色を鮮やかにすると言うよりは、実際にその場にいった人が目で見た光景に近い色彩にされていると思います。
そのためにも「白とび」で後からの色調補正に弊害が出ないようにされているとのこと。
プロカメラマンの中にはあえて補正をしない方もおられますが、佐藤健寿さんの場合は撮影した風景写真を実際に見た光景にするためにも色調補正は必須なのでしょう。
やはりデジカメにおいては、その機能をフルに活用してアンダーでの撮影から色調補正がおすすめなのが良くわかりました。
石川直樹さんから学ぶフィルムカメラの撮影方法
写真家、そして冒険家としてエベレストなどの名だたる山にも登頂されていることで有名な石川直樹さん。
以前の記事でも紹介していますが使用されているカメラは
Plaubel makina ブラウベル マキナ 67
「マキナ67」の愛称で呼ばれる中判カメラのPlaubel makina 67を使用されています。
場面によっては他の機種を使用されることもありますが、山などの極地に行かれる時は「マキナ67」を必ず持って行かれます。
ちなみに「マキナ67」は4台所持されているそう!
石川直樹さんのお話が聞けたのは友達が知り合いで講演を主催されていたので、そちらに伺った時に聞けたお話です。
こちらの写真はデナリで撮影された石川直樹さんの有名な写真ですが、実はこの写真手前の赤いのは、一緒に登ったクルーの頭の部分だそうです。
この時フィルムの枚数も少なくこの1枚だけを撮影、またフィルムカメラのため撮影した時に確認ができないので、あとで現像した時にクルーの頭の部分が写っていたことにショックをうけたそうです。
ただ時間が経つにつれ、写真全体のコントラストやその場面の臨場感を想うとこれで良かったのかなって考えに変わっていったそうです。
実際に素人の私が見ても「その時のその場の臨場感」が写真から伝わってきて、むしろ「ワザと入れたのかな」と知らなれば思っていたはずです。
ここぞと言う場面を一発撮影
先ほどの話でも出ていましたが、石川直樹さんは「ここだ!」と思った場所を一発のみしか撮影されません。
それはフィルムカメラなのでフィルム枚数に制限があるためではなく、決めた場所での思いを込めた写真以外はそれ以上は不要と言う考えからです。
これってもの凄いですよね。
今のデジカメ全盛の時代、何度も何度も撮影してやり直してしまいがちですが、石川直樹さんは一発のみです。
ましてやフィルムカメラなので、その場で確認できないにも関わらずです。
相当な撮影技術を持ち合わせていないと露出オーバーだったりアンダーすぎだったりするはずです。
時に普段生活している場所での撮影ならともかく、雪山なんて白い箇所が多いのでちょっとの失敗でも「白とび」しかねません。
またフィルムカメラを使われる他の理由としては、どんな環境下でもカメラが動かなくなることが無いこと。
そして中判カメラならでは広い撮影が可能なことからです。
現在でもデジタルでここまでの環境下に持ち出せる中判カメラは無いと思います。
冒険家として、もの凄いタフな環境で一緒に必ず撮影してくれることからフィルムカメラを使用されているわけですね。
フィルムカメラなので当然、撮って出しの写真で補正はされていないのですが、どの写真も綺麗な描写です。
この辺りも「中判カメラだからこそ」って言うのもあると思います。
「なるほど」と理解できるのですが、真似できる芸当では無いことが良くわかりました。
デジタルカメラとフィルムカメラのそれぞれの良さ
どちらの方が優れているって野暮なことは言いません。
どんな環境下どんな状況下で自身が撮影するか、プロカメラマンは自分の撮影スタイルによってより自分らしいカメラをセレクトされているかがわかります。
どちらのカメラマンも場面によっては勿論違うカメラを使用される時がありますが、自身が根本においている被写体にはより特化したものを所持されています。
ここまで「自分が撮影するものが何なのか」明確に突き進むのって本当に格好いいですよね。
あなたの撮影スタイルの参考になればすごく嬉しいです!