ファームアップはパソコンに詳しい人にとっては馴染みのあるものですが、最近はカメラにおいてもその頻度が増えてきました。
ファームアップとはどのようなもので、必ずしなければならないものなのでしょうか?
ファームアップとは?
ファームアップとは電子機器を制御するために組み込まれたソフトウェア、ファームウェアをアップデートすることです。
パソコンやスマホで使われるWindowsやAndroidなどのOSやアプリなどと違い、マザーボードやHDDなどの電子部品そのものに組み込まれたソフトウェアや、カメラやプリンター、家電などに組み込まれているソフトウェアをファームウェアと呼びます。
パソコンやスマホはキーボードやタッチパネルを操作すると、ファームウェアを介して入力情報をOSに伝え、OSがアプリを動かします。
出力する場合はアプリの結果をOSに伝え、ファームウェアが液晶に表示したり音を出したりします。
ファームウェアはHDDやマザーボードなど、ハードウェアにより近いソフトウェアと言えます。
ミラーレスで重要性が増したファームアップ
一眼レフカメラにAFやAEが搭載され、デジタルカメラになるにつれ、カメラ内部で電子制御される部品が増えたことでカメラもファームウェアのアップデートが徐々に行われるようになってきました。
ただ、一眼レフでファームアップが行われるのは主に初期トラブルなどへの対応が多く、初期ロットでなければあまりファームアップの必要性に迫られるということはありませんでした。
もちろん、AF精度のアップなどでファームウェアのアップデートが公開されることもありましたが、劇的に性能が向上するというほどの効果もなく、無理にアップデートしなくても良いかなといった程度のものでした。
ところが、ミラーレス一眼、特にフルサイズミラーレスの登場でファームアップがやにわに注目を集めています。
瞳AFなど最新のAF機能が発売後に追加
その大きな理由がAFです。
Nikon初となるフルサイズミラーレスZ7、Z6は発売開始時点では瞳AFを搭載していませんでしたが、ファームアップによって瞳AFが使えるようになりました。
ミラーレス機では常にイメージセンサーを使ってAFを行うので、顔検出Aや瞳AFといったレフ機のファインダー撮影では出来ない機能を常用できるようになりました。
レフ機ファインダー撮影時のAF速度や精度は位相差センサーの性能に依存するところが大きいのですが、顔検出AFや瞳AFはソフトウェアに依存する割合が高く、ファームアップによって製品発売後でも改善することができます。
瞳AFの様な画像検出AFは検出プログラム開発が日進月歩しており、発売時点から半年ほどでも大きな進歩があることもあり、ファームアップが注目されます。
そもそも、瞳AF自体はハードウェアの条件が揃っていればNikonの様にファームアップで後から搭載するということも可能になります。
SONYは動物の瞳AFに対応するアップデート情報を発表しており、最新機種だけでなく発売から一定期間経った機種でも新たに動物の瞳AFが使えるようになっています。
ファームアップはAF以外にも、ボタンカスタマイズの拡張や、メニューの使い勝手向上などユーザーインターフェースの改善も行われます。
ミラーレス機はレフ機より歴史が浅く、インターフェース面でもレフ機より少ないボタンをどう使うかということがまだ流動的なのでそういった面からもファームアップが注目される理由となっています。
そのほかにも電子シャッターや新しい記録メディアへの対応などデジタルカメラはファームアップで機能性が拡張できる可能性や性能アップの効果が大きくなっています。
ファームアップの方法
ファームアップの方法はメーカーによって異なるのでHPで必ず確認してください。
パソコンやカメラに慣れてるからといって手順を確認せずにファームアップすると、思わぬ失敗をすることもあります。
そうは言っても、作業自体は複雑なものではありません。
ファームアップの方法は大きく分けて2種類あります。
1つはカメラをパソコンにUSB接続してパソコンのソフトウェアからファームアップを行う方法です。
もう1つはパソコンでSDカードにHPからダウンロードしたファームアップデータを書き込み、それをカメラに差し込んで、カメラでファームアップする方法です。
いずれの作業も、メーカーHPのやり方を見ながら行えばさほど難しい作業ではなく、パソコンさえあればほとんどの人が自分で行うことができます。
レンズのファームアップ
意外と知られていないのがレンズのファームアップです。
一眼カメラのレンズにはフォーカスや絞り、手ブレ補正を動かすためのファームウェアが書き込まれています。
それらについてもファームアップ情報が公開されていることもあるので、アップデートする必要が出てくることもあります。
純正レンズの場合はレンズを装着した状態でカメラからファームアップの操作をすることができますが、社外レンズの場合は専用のUSB接続ツールが必要となることもあります。
社外レンズはAFや手ぶれ補正でカメラとの動作連動精度の向上がファームアップで行われる場合も多いので、USB接続ツールの購入は余計な出費に思える場合もありますが、定期的にファームアップ情報を取得し、アップデートすることがおすすめとなります。
ファームアップの危険性とリスク回避術
ファームアップは機能性の向上や拡張があり、とても便利にも思えますが、少なからずリスクもあります。
ファームウェアはハードウェアに近いソフトウェアなので、ファームウェアが破損するとその機器が全く使えなくなるリスクがあります。
近年ではファームアップによるファームウェアの破損リスクはかなり少なくなりましたが、リスクが0ではないことは頭に入れておく必要があります。
ファームアップでファームウェアが破損する理由としては、ファームアップソフトウェア自体の不備もありますが、よくある理由に通信エラーがあげられます。
ファームウェア更新ソフトをダウンロードするときに通信エラーが起きて更新ソフトが壊れていたり、ファームアップ中にUSB端子や記録メディアの接続が切られてしまいファームアップが中断してファームウェアが破損してしまうのです。
ファームアップを行う場合は、ダウンロード、USBや記録メディアの接続など、一つ一つを確実に行ってファームウェア破損のリスクを抑える様にしましょう。
作業自体は難しくありませんが、片手間で行なうと思わぬ失敗をすることもあるのがファームアップです。